「ゼネコンの施工管理」「大手の施工管理」と調べると、会社ごとの平均年収を並べたランキングがたくさん出てきます。ただ、ゼネコンが中小の建設会社と何が違い、そこで働く施工管理の仕事がどう変わるのかを、法律や国の統計で確かめられる記事は多くありません。
この記事では、建設業法と国土交通省の通知、建設業許可業者数調査、建設工事施工統計調査、大手ゼネコン4社の有価証券報告書を使って、ゼネコンと大手の施工管理の実態を確かめます。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| ゼネコンとは | 法律の言葉ではない。統計では、発注者から直接工事を請け負う「総合工事業」に当たる |
| 元請の施工管理 | 下請に出した工事にも、施工計画・工程・品質・安全の管理で実質的に関わることが法律上求められる |
| 大手の数 | 資本金10億円以上の建設業者は1,151業者で、許可業者全体の0.2% |
| 大手の工事量 | 資本金50億円以上の84社が、建設業専業の元請工事の24.7%を受けている。従業者は5.9% |
| 年収 | 大手4社の平均年間給与は1,043万〜1,245万円。ただし事務職なども含めた全従業員の平均 |
「ゼネコン」は法律の言葉ではない。統計では「総合工事業」
ゼネコンは、英語のゼネラル・コントラクター(総合請負業者)を略した業界の呼び名です。建設業法にこの言葉はありません。法律では、工事の最初の注文者を「発注者」、下請契約で工事を注文する建設業者を「元請負人」、請け負う側を「下請負人」と定めています(建設業法第2条第5項)。
国の統計で使う産業分類では、ゼネコンに近いのが「総合工事業」です。
この中分類には、主として土木施設、建築物を完成することを発注者に対し直接請負う事業所又は自己建設で行う事業所が分類される。
出典:令和6年経済センサス‐基礎調査 産業分類 中分類06-総合工事業(総務省統計局)
これに対して、内装や塗装など個別の工事を行う会社は「職別工事業」、電気や給排水などの設備工事を行う会社は「設備工事業」に分類されます。ゼネコンが工事全体をまとめ、専門の工事会社がそれぞれの工事を受け持つ、という分担です。
元請として大きな工事を下請に出すには、「特定建設業」の許可が要ります。発注者から直接請け負った1件の工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)になる場合です(建設業法第3条第1項第2号、同法施行令第2条)。令和8年3月末の許可業者48万3,823業者のうち、特定建設業の許可を持つのは5万511業者でした。
ゼネコンの施工管理は、下請の会社をまとめる仕事が中心になる
建設業法は、請け負った工事を丸ごと他の会社に請け負わせる「一括下請負」を禁止しています(第22条)。国土交通省の通知は、元請が下請に出した工事に「実質的に関与」していなければ一括下請負に当たるとしたうえで、発注者から直接請け負った会社が行うべきことを次のように定めています。
(ⅰ)施工計画の作成:請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成、下請負人の作成した施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正
出典:一括下請負の禁止について(国土交通省)
(ⅱ)工程管理:請け負った建設工事全体の進捗確認、下請負人間の工程調整
(ⅲ)品質管理:請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認
(ⅳ)安全管理:安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
通知は、これらを「全て行うことが必要」としています。元請の施工管理は、自分で作業をするのではなく、複数の下請の会社の計画を確かめ、工程を調整し、現場全体の安全を見る立場です。下請に出す金額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になると、特定建設業者には書類の義務も加わります。下請の会社名や工事の内容を書いた施工体制台帳を工事現場ごとに備え、各社の分担を示す施工体系図を現場に掲げなければなりません(建設業法第24条の8、同法施行令第7条の4)。
ここで出てくる「建築一式工事」がどこまでを指すのか、元請の建築工事で建築士が受け持つ工事監理とどう分かれるのかは建築施工管理とは? 仕事内容と建築士との違いを法律で整理で見ています。
会社の規模によるこの違いは、工事の原価の中身にも出ています。国土交通省の建設工事施工統計調査で、建設業専業の会社の完成工事原価を資本金の規模別に見ると、次のようになります。
| 資本金 | 労務費の割合 | 外注費の割合 |
|---|---|---|
| 1,000万〜3,000万円未満 | 10.8% | 41.1% |
| 3,000万〜5,000万円未満 | 8.5% | 54.1% |
| 1億〜10億円未満 | 6.0% | 56.4% |
| 50億円以上 | 4.9% | 56.1% |
| 全体 | 8.9% | 49.6% |
外注費の割合は、資本金3,000万円以上ではどの規模もおおむね5割台で、大手だけが特に高いわけではありません。はっきり違うのは労務費で、資本金が大きい会社ほど割合が小さく、50億円以上では4.9%でした。労務費には、工事に従事する作業員に払う賃金などが入ります。大手ほど、作業に当たる人を自社で抱えず、工事をまとめる側に回っていることが分かります。
元請と下請の施工管理で、法律上の役割がどう違うかは施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理で説明しています。
大手は建設業者の0.2%。その一部が元請工事の4分の1を受けている
「大手」と呼べる会社は、建設業者全体から見るとごくわずかです。国土交通省の建設業許可業者数調査によると、令和8年3月末に資本金10億円以上の許可業者は1,151業者で、全体の0.2%でした。100億円以上に限ると284業者です。
数は少なくても、受けている工事の量は大きく違います。建設工事施工統計調査で、令和6年度の建設業専業の会社を資本金の規模別に見ると、次の通りです。
| 資本金 | 業者数 | 従業者数 | 元請完成工事高 | 従業者1人あたりの元請完成工事高 |
|---|---|---|---|---|
| 50億円以上 | 84 | 20万4,767人(5.9%) | 16兆6,688億円(24.7%) | 約8,140万円 |
| 10億〜50億円未満 | 137 | 15万3,840人(4.5%) | 6兆8億円(8.9%) | 約3,900万円 |
| 1億〜10億円未満 | 1,179 | 22万9,591人(6.6%) | 8兆8,413億円(13.1%) | 約3,850万円 |
| 1,000万〜3,000万円未満 | 8万3,702 | 104万7,119人(30.3%) | 12兆9,793億円(19.2%) | 約1,240万円 |
| 全体 | 31万6,585 | 345万6,010人 | 67兆6,160億円 | 約1,960万円 |
資本金50億円以上の84社は、従業者では5.9%ですが、元請として完成させた工事の額では24.7%を占めています。従業者1人あたりの元請完成工事高は約8,140万円で、資本金1,000万〜3,000万円の会社の約6.6倍です。従業者には事務などの職員も含まれるので、施工管理1人が担当する工事の額そのものではありませんが、大手の施工管理ほど大きな工事や多くの下請を受け持つ傾向がうかがえます。
大手4社の平均年間給与は1,000万円を超える。ただし全職種の平均
株式を上場している会社は、有価証券報告書で従業員の平均年間給与を公表しています。一般に「スーパーゼネコン」と呼ばれる大手のうち、上場している4社の2026年3月期の数字は次の通りです。竹中工務店は非上場のため含めていません。
| 会社 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|
| 鹿島建設 | 8,959人 | 41.2歳 | 15.7年 | 約1,245万円 |
| 大林組 | 9,472人 | 42.0歳 | 15.9年 | 約1,239万円 |
| 大成建設 | 9,518人 | 42.3歳 | 17.0年 | 約1,191万円 |
| 清水建設 | 1万1,434人 | 43.7歳 | 16.1年 | 約1,043万円 |
この平均年間給与は、施工管理だけの数字ではありません。有価証券報告書の従業員には、事務、設計、研究開発、不動産開発などの部門の社員も含まれます。3社は賞与と基準外賃金(残業代など)を含み、清水建設は期末手当と諸手当を含んだ額として公表しています。子会社の社員も入っていません。
国の賃金統計でも、会社の規模による差ははっきりしています。令和7年賃金構造基本統計調査から計算した建築技術者の年収の目安は、従業員1,000人以上の会社で約860万円、10〜99人の会社で約585万円でした(施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安)。大手4社の数字はこれをさらに上回りますが、有価証券報告書は職種を限らない平均なので、そのまま比べることはできません。
大きな会社ほど、残業も多い傾向があります。令和7年賃金構造基本統計調査では、1,000人以上の会社の建築技術者の超過実労働時間は月23時間で、10〜99人の会社の10時間より長くなっています。規模と残業の関係は施工管理は「意外と楽」? 残業が少ない会社の条件を国の調査で見るで詳しく見ています。
大手ゼネコンに移る前に確かめること
大手への転職を考えるときは、年収のランキングより、次の点を会社ごとに確かめておくと判断しやすくなります。
- 中途採用の割合:常時雇用する労働者が300人を超える会社は、正社員などの採用に占める中途採用の割合を、直近3事業年度分、おおむね1年に1回以上公表しなければなりません(労働施策総合推進法第27条の2、同法施行規則第9条の2)。会社のサイトなどで、中途で入る人がどれくらいいるかを確かめられます。
- どの立場で現場に入るか:元請として下請に出す金額が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)の工事では、主任技術者に代えて監理技術者を置きます。土木・建築・電気・管工事などの指定建設業で監理技術者になるには、1級の施工管理技士などの資格が要ります。資格と立場の関係は施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで確かめています。
- 勤務地の範囲:全国に支店を持つ会社では、工事のある地域への異動や長期の出張がありえます。採用の段階で、勤務地を限定できるかを聞いておきます。
- 残業と休日の実態:大手の建設会社の職員組合でつくる団体の調査では、現場に出る職員の残業は減ってきています。数字の推移は施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見るで見ています。
中途採用の割合や勤務地の範囲は、会社のサイトだけでは分からないこともあります。建設業界専門の転職エージェントの面談で、応募先ごとの条件を聞く方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談![]()
ゼネコン以外の転職先は施工管理からの転職先は? 同業・発注者側・異業種の3つの道で整理しています。大手の現場で派遣社員として働く場合の決まりは、施工管理の派遣はやめとけ? なれない立場と給料を法律と統計で見るで確かめています。
数字を読むときに気をつけること
- 建設工事施工統計調査の資本金別の数字は、売上高のうち建設工事の完成工事高が80%以上を占める「建設業専業」の会社の集計です。調査は抽出調査で、回答のなかった会社は経営事項審査などの記録で補っています。金額には消費税が含まれます。
- 資本金の大きさと従業員の数は一致しません。資本金は大きくても社員が少ない会社や、その逆の会社もあります。
- 有価証券報告書の平均年間給与は、会社によって含める手当や対象の社員が少しずつ違います。各社の注記を確かめてください。
- 完成工事原価に占める割合、従業者1人あたりの元請完成工事高、許可業者に占める割合は、当サイトの計算です。
参考にした資料
- 建設業法(第2条・第3条・第22条・第24条の8)|e-Gov法令検索
- 建設業法施行令(第2条・第7条の4)|e-Gov法令検索
- 一括下請負の禁止について|国土交通省
- 建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在)|国土交通省
- 建設工事施工統計調査(令和6年度実績)|国土交通省
- 令和6年経済センサス‐基礎調査 産業分類 分類項目名、説明及び内容例示|総務省統計局
- 有価証券報告書(2026年3月期)|鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(第27条の2)・同法施行規則(第9条の2)|e-Gov法令検索
