施工管理からの転職先は、大きく三つに分かれます。建設業の中で会社を変える道、工事を発注する側に移る道、建設業の外に出る道です。
おすすめの転職先を順位で並べた記事は多くありますが、この記事では順位をつけません。代わりに、国と東京都の中途採用の条件、資格がどこまで持ち運べるのか、転職で賃金がどう変わったのかを、公表されている資料で確かめます。
施工管理からの転職先は、三つの道に分かれる
| 道 | 行き先の例 | 資格・経験の扱い |
|---|---|---|
| 同業の別の会社 | ゼネコン、専門工事会社、ハウスメーカーなど | 施工管理技士の資格も、主任技術者としての経験もそのまま使える |
| 発注者側 | 国土交通省の地方整備局、都道府県・市町村の技術職など | 中途採用の条件として、工事の実務経験が求められる |
| 建設業の外 | 建物の管理や保守、製造業など | 資格が法律で求められる場面は減る。管理の経験をどう伝えるかが中心になる |
三つの道のどれを選ぶかで、使える資格と、確かめるべき条件が変わります。順に見ていきます。
転職で賃金が増えた人は約4割、減った人は約3割
道ごとの話の前に、転職全体で賃金がどう変わっているかを確かめます。厚生労働省の雇用動向調査(令和7年)によると、転職した人のうち、前の職場より賃金が「増加」した人は40.8%、「減少」した人は31.0%でした。
年代で分けると、違いがはっきり出ます。
| 年齢 | 増加 | 減少 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 55.2% | 17.5% |
| 25〜29歳 | 49.8% | 23.9% |
| 30〜34歳 | 48.6% | 29.0% |
| 35〜39歳 | 43.5% | 23.9% |
| 40〜44歳 | 44.9% | 27.4% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 30.1% |
| 50〜54歳 | 29.4% | 42.0% |
| 55〜59歳 | 25.5% | 38.9% |
| 全体 | 40.8% | 31.0% |
40代までは、増えた人が減った人を上回っています。50代に入ると逆転し、減った人の方が多くなります。
ただし、この数字は全ての産業と職種をまとめたもので、施工管理だけの数字ではありません。施工管理の年収は年代とともに上がり、建築技術者では55〜59歳が一番高い水準です(施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安)。年代が上がるほど、今の年収を保ったまま移るのは難しくなる、と読むのが自然です。
一つ目の道:同業の別の会社へ移る
同じ建設業の中で会社を変える場合、一番の強みは、資格が会社ではなく個人に付くことです。建設業法第27条は、技術検定の合格者について次のように定めています。
第一次検定又は第二次検定に合格した者は、それぞれ政令で定める称号を称することができる。
出典:建設業法 第27条 第7項(e-Gov法令検索)
「1級建築施工管理技士」のような称号は、合格した本人が名乗るものです。監理技術者資格者証も、資格を持つ本人の申請で国土交通大臣が交付します(同法第27条の18)。有効期間は5年で、更新できます。会社を辞めても、資格や資格者証がなくなるわけではありません。
同業の中でも、移る先によって仕事と条件は変わります。見ておきたいのは次の二つです。
- 元請か、下請の専門工事会社か。元請は現場全体の巡視や作業間の調整を担い、下請は自社が受け持つ工事を管理します。違いは施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理にまとめました。
- 会社の規模。賃金構造基本統計調査では、建築技術者の年収の目安は、社員1,000人以上の会社と10〜99人の会社で約275万円違います(令和7年)。差の7割ほどは、残業代を含む月の給与の差です。
二つ目の道:発注者側(公務員の技術職)に移る
工事を発注する側に移ると、立場が変わります。施工会社として指示を受ける側から、発注者として指示し、工事を検査する側になります。公共工事の監督員がこの立場です(施工管理と現場監督の違いは? 現場代理人・監督員との関係も整理)。
国と東京都は、民間で経験を積んだ人を対象にした採用試験を行っています。
| 項目 | 国土交通省 経験者採用試験(係長級(技術)) |
|---|---|
| 区分 | 地方整備局・北海道開発局区分 |
| 受験資格 | 高校卒業などから11年を経過し、短大・高専・大学などで電気、機械、土木、建築又は農業農村工学の課程を修めて卒業した人(2026年4月1日時点) |
| 採用予定数 | 約100名(2026年7月1日現在) |
| 2026年度の日程 | 申込み 7月27日〜8月17日/第1次試験 10月4日 |
| 選考区分 | 採用予定 | 求められる経験 | 専門試験が免除される資格 |
|---|---|---|---|
| 建築施工 | 4人 | 建設会社等における建築施工管理 | 一級建築士、技術士(建設部門など) |
| 土木設計施工 | 5人 | 建設会社、設計コンサルタント等での、大規模構造物や道路・河川などの設計、監督業務又は監理技術者としての業務など | 技術士(建設・上下水道部門など) |
どちらも、採用の人数は多くありません。東京都の建築施工は4人、土木設計施工は5人です。また、上の二つの試験は、2026年度の申込みがどちらも締め切られています。発注者側を考えるなら、次の年度の日程を早めに確かめておく必要があります。
東京都の建築施工の区分は、求める経験に「建築施工管理」をそのまま挙げています。施工管理の経験が、応募の条件として名指しされている例です。都道府県や市町村もそれぞれ経験者採用を行っているので、住んでいる地域の採用情報も確かめてみてください。
三つ目の道:建設業の外に出る
建設業の外に出ると、施工管理技士の資格の扱いが変わります。主任技術者や監理技術者を現場に置く義務は、建設業法が建設業者に課したものです。建設業の外では、この資格が法律で求められる場面は少なくなります。
その代わりに伝えられるのは、仕事の中身です。建設業法第26条の4は、主任技術者と監理技術者の職務を、施工計画の作成、工程管理、品質管理、現場で働く人の指導監督と定めています。
計画を立て、期限と品質を守り、複数の会社の人を動かす経験は、建設業に限った話ではありません。応募書類では「施工管理をしていた」とだけ書くより、どの規模の工事で、何社を調整し、何を守ったのかを具体的に書く方が、業界の外の人にも伝わります。
一方で、建設業の外に出ると、年代によっては賃金が下がる可能性も高くなります。先ほどの統計の通り、50代では転職で賃金が減った人の方が多くなっています。
どの道でも、動く前に確かめておくこと
- 今の年収のうち、残業代がいくらか。賃金統計の月の給与は残業代を含んだ額で、求人票の年収にも残業代が含まれていることがあります。残業の少ない職場に移ると、基本給が同じでも年収は下がります。
- 持っている資格と、実務経験の年数。発注者側の採用試験は、学歴に応じた経験年数を条件にしています。資格者証の有効期限も確かめておきます。
- 辞めたい理由が、会社を変えれば解決するものか。労働時間が理由なら、同じ施工管理でも、建築と土木など工事の種類で残業時間に差があります。
施工管理の労働時間の実態と、工事の種類による差については、施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで確かめています。
辞めたい理由を会社と仕事に分ける考え方や、退職の申し出、施工管理技士の受検に必要な実務経験の証明など、辞める前に確かめておきたいことは施工管理を辞めたいときは? 辞める前に確かめる5つのことで整理しています。
参考にした資料
- 令和7年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
- 建設業法(第26条の4・第27条・第27条の18)|e-Gov法令検索
- 国土交通省経験者採用試験(係長級(技術))|人事院 国家公務員試験採用情報NAVI
- 令和8年度 東京都職員キャリア活用採用選考案内|東京都人事委員会
- 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(第1表)|政府統計の総合窓口(e-Stat)
