2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。それから2年近くがたち、施工管理の残業は本当に減ったのでしょうか。
この記事では、規制が始まる前と後の数字を、厚生労働省の統計、建設会社の職員組合の調査、国土交通省の調査の三つで比べます。どれも施工管理だけを取り出した数字ではないので、誰を対象にした数字なのかを添えて見ていきます。
| 見たもの | 規制の前 | 規制の後 |
|---|---|---|
| 建設業の一般労働者の残業(月平均) | 14.4時間(2023年) | 13.5時間(2025年) |
| 現場に出る職員(建築)の残業(11月) | 52.1時間(2023年) | 41.0時間(2025年) |
| 技術者の休日が「4週8休以上」の会社 | 21.2%(令和5年度調査) | 38.5%(令和7年度調査) |
2024年4月に変わったこと
時間外労働の上限は、労働基準法第36条に書かれています。原則となる上限を定めているのが、次の第4項です。
前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
出典:労働基準法 第36条第4項(e-Gov法令検索)
条文のかっこの中は、1年単位の変形労働時間制で働く場合の上限です。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、時間外労働は年720時間以内です。休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内に収め、月45時間を超えられるのは年6か月までと決まっています(同条第5項・第6項)。
第6項が上限をかけているのは、協定に書いた時間ではなく、実際に労働させた時間です。違反した使用者は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(同法第119条)。
一般の業種では、この上限が2019年4月(中小企業は2020年4月)から始まっていました。建設業では、2024年3月31日まで適用されていませんでした(同法第139条第2項)。その日をまたぐ36協定では、協定の期間の初日から1年を経過する日までが対象外です。災害の復旧・復興の事業では、今も月100時間未満と平均80時間以内の上限が適用されません(同条第1項)。
建設業全体の残業は、適用の年に大きく減った
まず国の統計です。厚生労働省の毎月勤労統計調査から、建設業の一般労働者(パートタイム労働者を除いた人)の数字を、規制が始まる前の2023年から見ます。対象は事業所規模5人以上の事業所です。
| 年 | 建設業の所定外労働時間 | 調査産業計の所定外労働時間 | 建設業の出勤日数 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 14.4時間(-1.4%) | 13.8時間(-0.4%) | 20.4日 |
| 2024年 | 13.3時間(-7.5%) | 13.5時間(-2.4%) | 20.1日 |
| 2025年 | 13.5時間(+0.8%) | 13.2時間(-2.0%) | 20.0日 |
規制が始まった2024年、建設業の所定外労働時間は前年より7.5%減りました。調査産業計の減り方(2.4%)の3倍ほどで、月13.3時間と、調査産業計の13.5時間を下回っています。
ところが2025年は、前年より0.8%増えて13.5時間でした。調査産業計は2.0%減ったので、再び建設業の方が長くなっています。出勤日数は、20.4日から20.0日へ少しずつ減りました。
この統計の建設業には、施工管理の他に、現場の職人や事務の職員も含まれます。また、前年比は厚生労働省が公表した値で、表の時間どうしの差から計算した値とは一致しないことがあります。
現場に出る職員の残業は、2年で2割ほど減った
施工管理に近い人の数字として、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)の時短アンケートを使います。ゼネコンを中心とする建設会社の職員組合でつくる団体で、毎年11月の1か月の労働時間を組合員に尋ねています。現場で工事を管理する「外勤」が、施工管理に最も近い区分です。
| 年(11月) | 外勤(建築) | 外勤(土木) | 全産業 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 61.7時間 | 59.5時間 | 14.6時間 |
| 2023年 | 52.1時間 | 46.6時間 | 14.2時間 |
| 2024年 | 44.7時間 | 39.2時間 | 14.0時間 |
| 2025年 | 41.0時間 | 38.6時間 | 13.6時間 |
外勤(建築)は、規制前の2023年の52.1時間から、2025年には41.0時間まで減りました。2年で11.1時間、約2割の減少です。2019年から2023年までの4年間に減ったのは9.6時間だったので、規制をはさんで減り方が速くなっています。外勤(土木)も、2年で46.6時間から38.6時間になりました。
長く残業した人の割合も下がっています。月80時間以上の所定外労働をした外勤の組合員は、2024年の7.0%から2025年は5.6%になりました。月100時間以上の外勤(建築)は、4.1%から2.7%です。
ただし、11月の暦の影響があります。日建協は、2024年11月は前年より祝日が1日少なく、その分だけ所定外労働時間が減った影響も考えられるとしています。2025年11月は、実際に稼働する日が前年より2日少ない月でした。回答者は規模の大きな建設会社の職員が中心で、中小の会社の状況はここからは分かりません。
休みは増えたが、民間工事の現場はまだ閉めにくい
中小の会社も含めた数字として、国土交通省の「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」があります。建設業の業界団体に加入している会社に、自社の技術者と技能者の働き方を尋ねる調査です。令和7年度は2026年1月1日時点の状況を尋ね、2,024社が回答しました。
| 調査 | 4週8休以上 | 4週6休程度 |
|---|---|---|
| 令和4年度調査 | 11.7% | 42.2% |
| 令和5年度調査 | 21.2% | 43.4% |
| 令和6年度調査 | 28.6% | 39.6% |
| 令和7年度調査 | 38.5% | 33.0% |
技術者の休日が「4週8休以上」と答えた会社は、令和4年度調査の11.7%から、令和7年度調査では38.5%になりました。4回の調査で初めて、「4週6休程度」を上回っています。
同じ調査では、残業時間も尋ねています。技術者の月の平均残業時間が45時間未満の会社は、令和6年度調査の86.6%から、令和7年度調査では96.5%に増えました。会社が答えた平均的な残業時間なので、繁忙期の一人ひとりの残業までは分かりません。
差がはっきり出るのは、発注者の違いです。4週8閉所の導入率は、公共工事がほとんどの会社で78.3%、民間工事がほとんどの会社で24.5%でした。元請として受けた工事が最終的に4週8閉所になったと答えた会社は、全体の49.3%です。
同じ調査では、会社の規模や、元請と下請の違いでも休みと残業を集計しています。その差は施工管理は「意外と楽」? 残業が少ない会社の条件を国の調査で見るで見ています。
日建協の調査でも、4週8閉所で受注した工事は増えています。2025年に着工した工事では建築が81.6%、土木が88.0%で、建築は2023年に着工した工事の58.7%から大きく伸びました。2025年11月に実際に休めた日数は、4週8閉所の作業所で11.2日、4週3閉所以下の作業所で10.1日でした。
会社に報告されていない残業がある
ここまでの数字には、一つ注意があります。会社の記録に残らない残業です。日建協は、実際に残業した時間と、会社に報告した時間に差があるかを尋ねています。
| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 実際の残業と報告に差がある(全体) | 16.3% | 12.2% |
| 実際の残業と報告に差がある(外勤) | 22.3% | 16.9% |
| 実際の残業が月100時間以上の人のうち、差がない人 | 4.3% | 12.9% |
| 申告した残業を会社や上司に不適切に少なくされた(過去1年) | 3.9% | 2.8% |
差があると答えた人は減っていますが、外勤では2025年も6人に1人います。実際の残業が長い人ほど報告との差がある人が多く、月100時間以上残業した人で差がないと答えたのは12.9%だけでした。
差がある理由として、2024年も2025年も最も多かったのは「36協定時間を超えてしまうので忖度/自粛」でした。上限を守るために、働いた時間を短く報告している人がいることになります。
申告した時間と実際の時間の差は、長時間労働で亡くなった現場の管理者の労災事案でも、上司の支援につながらなかった理由として研究で挙げられています。その事案の中身は現場監督・施工管理の精神崩壊やうつは珍しい? 労災の統計で見るにまとめています。
自分の出退勤の記録から残業時間を数え直すときは、勤務時間計算ツールで、1日8時間と週40時間を超えた時間を分けて出せます。
残業が減って、収入が減った人もいます。会社からの残業削減の指示で困っていることとして、2025年は外勤の19.4%が「賃金が減少して生活に余裕がなくなった」を選びました(2つ以内で選択)。統計の年収に残業代が含まれている点は、施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で扱っています。
年収のうち残業代が占める割合は、年代で違います。建築技術者と産業計の年収の差のうち、25〜29歳と30〜34歳では4割前後が残業代ですが、45〜49歳では7%まで下がります。残業が減ったときに収入に響きやすい年代がどこかは、施工管理の給料が高い理由は? 残業代・基本給・賞与を統計で分解で年代別に見ています。
国の監督の結果も見ておきます。厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に労働基準監督署が入った結果を毎年公表しています。建設業では、令和5年度に監督した1,819事業場のうち775事業場で、違法な時間外労働が見つかりました。規制が始まった令和6年度は、1,923事業場のうち749事業場です。割合にすると42.6%から38.9%です(割合は当サイトで計算)。長時間労働が疑われる事業場を選んで監督した結果なので、建設業全体の違反の割合ではありません。
短い工期の契約は、請け負う側も禁止に
残業を減らすには、工期に余裕が要ります。建設業法は、著しく短い工期での契約を禁じています。
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
出典:建設業法 第19条の5(e-Gov法令検索)
2 建設業者は、その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
第1項は工事を注文する側、第2項は工事を請け負う建設業者に向けた規定です。請け負う側にも禁止を広げた改正は、2025年12月12日に施行されました。
ただ、現場ではまだ差が残っています。国土交通省の令和7年度調査で民間の発注者に尋ねると、契約の時点で4週8閉所を想定していた現場は約5割でしたが、実際に実現できたのは約3割でした。日建協の調査でも、外勤の組合員が閉所の課題として挙げたのは、前年と変わらず「短工期発注」でした。
自分の職場で確かめたい三つのこと
統計と調査で見ると、2024年4月をはさんで、施工管理の残業は減り、休みは増えています。それでも、民間工事の現場では閉所が進んでおらず、会社に報告されない残業も残っています。自分の職場に当てはめるなら、次の三つを確かめます。
- 36協定の特別条項。月45時間を超えて働かせることができる月数は、協定に書くことになっています(労働基準法第36条第5項)。36協定は、使用者が労働者に周知しなければならない書類の一つです(同法第106条)。
- 実際の残業時間と、報告した時間の差。出退勤の時刻を自分でも残しておくと、差があるかどうかが分かります。
- 担当する現場の閉所設定と発注者。同じ会社の中でも、公共工事と民間工事で休みの取りやすさが違います。
残業の記録は、辞めるときにも役に立ちます。失業給付との関係は施工管理を辞めたいときは? 辞める前に確かめる5つのことで、労働時間と離職率を他の産業と比べた数字は施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで整理しています。
上の三つを確かめて、今の職場で残業や休みが変わりそうにないと分かったら、会社を移る選択肢もあります。建設業界専門の転職エージェントの面談では、応募先の残業や閉所の状況を尋ねることもできます。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談![]()
参考にした資料
- 労働基準法(第36条・第106条・第119条・第139条)|e-Gov法令検索
- 建設業法(第19条の5)|e-Gov法令検索
- 毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報|厚生労働省
- 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報|厚生労働省
- 毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報|厚生労働省
- 2024時短アンケートダイジェスト|日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)
- 2025時短アンケートダイジェスト|日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)
- 「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和6年度)」の結果を公表|国土交通省
- 「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和7年度)」の結果|国土交通省
- 持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法が完全施行されます|国土交通省
- 長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果|厚生労働省
- 長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果|厚生労働省
