建築の施工管理は、ビルやマンション、住宅、工場などの建物の工事で、工程・品質・原価・安全を管理する仕事です。建物の工事には、施工管理とは別に「建築士」が関わります。設計をするのも建築士、工事が設計図どおりに進んでいるかを確かめる「工事監理」をするのも建築士です。名前が似ていても、施工管理と工事監理は、法律上は立場の違う別の仕事です。
この記事では、建設業法で「建築一式工事」がどう定義されているかを確かめたうえで、建築士法と建築基準法から、建築士と施工管理の役割の違いを整理します。法律が工程に区切りを入れている中間検査、会社に置く人と一級建築士の扱い、2級の三つの種別、建築士試験の合格が技術検定の受検にどう関わるかも、法令と受検の手引で見ます。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 建築一式工事の範囲 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事。500万円以上の専門工事を自社で施工するときは、その工事の技術者を置く |
| 建築士との違い | 建築士の工事監理は、建築主の側で工事を設計図書と照らし合わせる仕事。施工管理は、工事を請け負った側で施工そのものを管理する仕事 |
| 法律が決めた工程の区切り | 3階以上の共同住宅では、2階の床と梁の配筋を終えたら中間検査。合格証が出るまで、その鉄筋をコンクリートで覆えない |
| 会社に置く人 | 営業所技術者・主任技術者には、1級・2級建築施工管理技士(2級は種別「建築」)の他、一級・二級建築士もなれる。監理技術者には1級建築施工管理技士か一級建築士 |
| 2級の種別 | 「建築」「躯体」「仕上げ」の三つ。種別によって、使える許可の業種が違う |
| 受検への近道 | 一級建築士試験の合格者は、第一次検定を受けずに第二次検定から受けられる |
| 業界の数字 | 建築工事業の許可業者は2000年から37.8%減り、前年からの減少数も全業種で最も多い |
建築の施工管理が受け持つのは「建築一式工事」
建設業法は、建設工事を29の種類に分けています(別表第一)。そのうち、建物を丸ごと建てる工事が「建築一式工事」です。国土交通省は告示で、その中身を次のように定めています。
| 建設工事の種類 | 建設工事の内容 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
建物の工事は、基礎、鉄骨や鉄筋コンクリートの躯体、屋根、内装、電気、空調・給排水と、多くの専門工事の組み合わせでできています。それらを一つの建物にまとめ上げる企画・指導・調整が、建築一式工事の中身です。電気工事や管工事がそれぞれの専門工事を受け持つのに対して、建築の施工管理は、建物全体の工程をつなぐ立場に立つことが多くなります。
許可が要らない「軽微な建設工事」の線も、建築一式工事だけ別に決められています。他の工事は1件500万円未満ですが、建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅の工事です(建設業法施行令第1条の2)。
建築一式工事を請け負った会社が、その中の専門工事(500万円以上のもの)を自分で施工するときは、その専門工事の主任技術者になれる要件を持つ人を現場に置かなければなりません。置けない場合は、その専門工事の許可を持つ会社に施工させます(建設業法第26条の2)。建築の施工管理の仕事に、専門工事の会社を選んで工程を組み合わせることが含まれるのは、このためでもあります。4大管理の中身や1日の流れは、施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理で整理しています。
建築士の工事監理と、施工管理は別の仕事
建築の施工管理が、他の施工管理とはっきり違うのはここです。建物の工事には、施工管理とは別に、建築士が「工事監理者」として関わります。建築士法は、工事監理を次のように定義しています。
この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。
出典:建築士法 第2条 第8項(e-Gov法令検索)
工事監理者を定めるのは、建物の発注者である建築主です(建築基準法第5条の6第4項)。一定の規模を超える建物では、設計と工事監理を建築士にしかさせてはならないと決められています。例えば鉄筋コンクリート造や鉄骨造で延べ面積300平方メートルを超える建物を新築するときは、一級建築士でなければ設計も工事監理もできません(建築士法第3条)。
建築設備については、さらに別の区分があります。延べ面積が2,000平方メートルを超える建築物の建築設備に係る設計または工事監理では、建築士は建築設備士の意見を聴くよう努めます(建築士法第18条第4項)。階数が3以上で5,000平方メートルを超える建築物では、設備設計一級建築士の確認が要ります(同法第20条の3)。設備の側の立場と資格は設備施工管理とは? 管工事の仕事内容と必要な資格を法律で整理で整理しています。
工事監理者は、工事が設計図書の通りに行われていないと認めたときは、すぐに工事施工者にそのことを指摘し、設計図書の通りに行うよう求めます。工事施工者が従わないときは、建築主に報告しなければなりません(建築士法第18条第3項)。指摘を受けて直すのは、工事を請け負った側、つまり施工管理の側です。
| 違い | 工事監理者 | 主任技術者・監理技術者(施工管理) |
|---|---|---|
| 根拠の法律 | 建築士法・建築基準法 | 建設業法 |
| 誰が置くか | 建築主が定める | 工事を請け負った建設業者が置く |
| 何をするか | 工事を設計図書と照合し、その通りに行われているかを確認する | 施工計画の作成、工程管理、品質管理など、施工の技術上の管理をする |
| なれる人 | 建物の規模に応じて、一級建築士・二級建築士・木造建築士 | 工事の種類と規模に応じて、施工管理技士・建築士・実務経験者など |
「監理技術者」と「工事監理者」は字がよく似ていますが、前者は建設業法で工事を請け負った側が置く技術者、後者は建築士法で建築主の側に立つ建築士です。工事現場に掲げる確認の表示にも、建築主、設計者、工事施工者、工事の現場管理者を分けて書くことになっています(建築基準法第89条第1項)。同じ条の第2項は、工事の施工者に、設計図書を工事現場に備えておくよう求めています。
一人が両方の資格を持つこともありますし、工事監理は設計事務所の建築士が、施工の管理は建設会社の施工管理が受け持つというように、別々の会社が分担することもあります。現場の「監督」と呼ばれる人たちの呼び名の違いは、施工管理と現場監督の違いは? 施工監理・工事監理・CMとの関係も整理で確かめています。
同じ「確かめる人」でも、公共の土木工事では建築士ではなく発注者自身が監督員を置き、立会いと完成検査を行います。その違いは土木施工管理とは? 仕事内容と建築との違いを法律と基準で整理で見ています。
中間検査と完了検査が、工程に区切りを入れる
建築確認を受けて建てる建物には、建築基準法の検査があります。工事を終えたときの完了検査は、建築主が、工事が完了した日から4日以内に建築主事等に届くように申請します(建築基準法第7条第1項・第2項)。
工事の途中にも、法律で決まった検査があります。階数が3以上の共同住宅では、2階の床とそれを支える梁に鉄筋を配置する工事を終えたら、中間検査を申請します(建築基準法第7条の3第1項、同法施行令第11条)。この中間検査の合格証が出るまでは、その鉄筋をコンクリートなどで覆う工事をしてはいけません(同法第7条の3第6項、同法施行令第12条)。
つまり、3階以上のマンションでは、2階の床のコンクリートを打つ日を、中間検査の合格より前に置くことができません。この他にも、特定行政庁が地域や建物の種類を限って中間検査の工程を指定していることがあります(同法第7条の3第1項第2号)。建築の施工管理が工程表を組むときは、こうした検査の時期も区切りの一つになります。
建築工事業では、建築士も営業所技術者や監理技術者になれる
建築工事業の許可を持つ会社は、営業所ごとに営業所技術者を置き、工事現場ごとに主任技術者か監理技術者を置きます。建築工事業では、施工管理技士だけでなく、建築士の免許もこの要件に使えます。
| 置く人 | 根拠 | なれる人(建築工事業の場合) |
|---|---|---|
| 営業所技術者・主任技術者 | 建設業法第7条・第26条第1項 | 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(種別「建築」)、一級建築士、二級建築士、指定学科の卒業と実務経験がある人、10年以上の実務経験がある人など |
| 監理技術者 | 建設業法第15条・第26条第2項 | 1級建築施工管理技士、一級建築士など。実務経験だけではなれない |
建築工事業は、7つの指定建設業の一つです(建設業法施行令第5条の2)。元請として請け負った工事で、下請に出す金額の合計が8,000万円以上になると、主任技術者の代わりに監理技術者を置きます(建設業法第26条第2項、同法施行令第2条)。他の業種の線は5,000万円なので、建築工事業だけ高く決められています。指定建設業の監理技術者は、1級の国家資格を持つ人などに限られ、建設業技術者センターの資格要件の表では、建築工事業の欄に1級建築施工管理技士と一級建築士が挙げられています。
国や地方公共団体の工事、学校・病院・共同住宅などの工事で、請負代金が9,000万円以上の建築一式工事では、主任技術者や監理技術者を原則として専任で置きます(建設業法第26条第3項、同法施行令第27条)。1級と2級で就ける立場の違いは施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで整理しています。
2級は「建築」「躯体」「仕上げ」の三つに分かれる
2級建築施工管理技術検定の第二次検定は、「建築」「躯体」「仕上げ」の三つの種別に分かれています。どの種別で合格したかによって、合格しただけで営業所技術者や主任技術者の要件を満たせる許可の業種が変わります。1級には種別がありません。
| 2級の種別 | 合格しただけで要件を満たせる主な業種 |
|---|---|
| 建築 | 建築工事業、解体工事業 |
| 躯体 | とび・土工工事業、鉄筋工事業、鋼構造物工事業、大工工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、解体工事業 |
| 仕上げ | 内装仕上工事業、左官工事業、屋根工事業、防水工事業、塗装工事業、建具工事業、大工工事業など |
ゼネコンや工務店で建物全体の施工管理をするなら、建築工事業に使える種別「建築」が中心になります。鉄筋や内装などの専門工事会社で施工管理をするなら、その会社の許可の業種に合う種別を選ぶと、会社の許可の要件にそのまま使えます。受ける種別を決める前に、勤め先の許可の業種を確かめておくと迷いません。
内装の会社であれば、選ぶ種別は「仕上げ」です。内装仕上工事は建築一式工事を構成する専門工事の一つですが、使える仕上げ材そのものが建築基準法の内装制限とシックハウス対策で決められている点が他の専門工事と違います。その中身は内装施工管理とは? 仕事内容と内装制限のしくみを法律で整理で整理しました。
一級建築士試験の合格者は、第二次検定から受けられる
建築施工管理の技術検定は、第一次検定と第二次検定に分かれています。一級建築士試験に合格している人には、第一次検定を受けずに第二次検定から受けられる区分があります。令和8年度の受検の手引から、新しい受検資格の主な区分を並べます。
| 検定 | 通常の区分 | 一級建築士試験の合格者の区分 |
|---|---|---|
| 2級 第二次検定 | 2級の第一次検定に合格した後、実務経験3年以上 | 一級建築士試験の合格後、実務経験1年以上 |
| 1級 第二次検定 | 1級の第一次検定に合格した後、実務経験5年以上(特定実務経験1年以上を含めば3年以上、監理技術者補佐として1年以上) | 一級建築士試験の合格後、実務経験5年以上(特定実務経験1年以上を含めば3年以上)。第二次検定のみの受検 |
特定実務経験とは、請負金額4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事で、監理技術者や主任技術者の指導の下などで行った施工管理の経験を指します。新受検資格の手引の区分に挙がっているのは一級建築士試験の合格者で、二級建築士試験の合格は区分に入っていません。二級建築士の人が技術検定を受けるときは、第一次検定からの通常の区分になります。
受検に数える実務経験は、工事の施工の管理に直接的に関わった経験です。どんな仕事が数えられないかは施工管理アシスタントとは? 事務との違いと実務経験になる条件で手引の書き方を確かめています。
建築工事業の許可業者は、25年あまりで4割近く減った
国土交通省は毎年、業種ごとに許可を持つ業者の数をまとめています。建築工事業は、許可業者の数では29業種のうち、とび・土工工事業に次いで2番目に多い業種です。一方で、減り方は大きく、土木工事業や電気工事業とは違う動きをしています。
| 業種 | 2000年3月末 | 2026年3月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 建築工事業 | 226,778業者 | 140,967業者 | −37.8% |
| 土木工事業 | 167,891業者 | 130,833業者 | −22.1% |
| 電気工事業 | 53,743業者 | 66,534業者 | +23.8% |
2026年3月末の建築工事業の許可業者は、許可業者全体の29.1%にあたります。前の年からは2,626業者(1.8%)減り、減った数は全業種で最も多くなりました。この資料からは減った理由までは分かりませんが、建物を丸ごと請け負う会社の数は、長く減り続けています。
人手の足りなさは、厚生労働省の一般職業紹介状況にも出ています。2026年7月の有効求人倍率は、「建築・土木・測量技術者」で5.46倍でした。職業計の1.05倍の5倍を超えています。ただし、この分類には土木や測量の技術者も含まれ、建築の施工管理だけを取り出した数字ではありません。年齢や年収の目安は施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で、賃金構造基本統計調査の「建築技術者」から見ています。
建築の施工管理を目指す・移る前に確かめること
- どんな建物を建てる会社か。ビル・マンション、戸建て住宅、工場・倉庫、改修工事では、工期の長さも発注者も違います。
- 元請のゼネコン・工務店か、専門工事会社か。元請なら建物全体の工程を組み、専門工事会社なら元請の工程の中で自社の工事を管理します。
- 会社の許可の業種は何か。2級を受けるときの種別や、合格後にどの立場に就けるかが、許可の業種で変わります。
- 技術検定の受検を会社がどう支えるか。実務経験の証明や、1級を取ったときに監理技術者として配置される予定があるかを聞いておきます。
元請と専門工事会社で仕事の中身がどう違うかはゼネコンの施工管理とは? 大手と中小の違いを法律と統計で見る、職人や未経験から入る道は未経験から施工管理になれる? 資格なし・文系から技士への道で確かめています。建築の施工管理の経験がある人が会社を移るときは、建設業界専門の転職エージェントの面談で、今の資格と経験がどの会社でどう評価されるのかを聞く方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談![]()
数字を読むときに気をつけること
- 受検資格は令和8年度の新受検資格の手引によるものです。旧受検資格の区分や、年度ごとの変更は、建設業振興基金の最新の手引で確かめる必要があります。
- 2級の種別と許可の業種の対応は、建設業法施行規則第7条の3の表から主なものを抜き出したものです。実務経験を組み合わせた要件は省いています。
- 許可業者数は、業種ごとの許可を数えたものです。建築工事業の許可を持っていても、建築一式工事を主な仕事にしているとは限りません。
- 有効求人倍率はパートを含む常用の数字で、2026年7月の値です。職業の分類は厚生労働省の職業分類によります。
- 中間検査の工程は、法律と政令で決まったものの他に、特定行政庁が指定するものがあります。個々の建物で対象になるかは、所在地の特定行政庁の指定で決まります。
参考にした資料
- 建設業法(第7条・第15条・第26条・第26条の2・別表第一)|e-Gov法令検索
- 建設業法施行令(第1条の2・第2条・第5条の2・第27条)|e-Gov法令検索
- 建設業法施行規則(第7条の3)|e-Gov法令検索
- 建築士法(第2条・第3条〜第3条の3・第18条)|e-Gov法令検索
- 建築基準法(第5条の6・第7条・第7条の3・第89条)|e-Gov法令検索
- 建築基準法施行令(第11条・第12条)|e-Gov法令検索
- 業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方|国土交通省
- 1級国家資格等による監理技術者の資格要件|建設業技術者センター
- 建築・電気工事施工管理技術検定(令和8年度 新受検資格 受検の手引)|建設業振興基金
- 建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在)|国土交通省
- 一般職業紹介状況(令和8年7月分)|厚生労働省
