「施工管理の派遣はやめとけ」と調べると、「キャリアに天井がある」「使い捨てにされる」といった説明が出てきます。ただ、派遣の施工管理が法律上どこまでの仕事をできて、どの立場には就けないのか、給料はどう決まるのかを、条文や国の統計で確かめられる記事は多くありません。
この記事では、派遣で施工管理として働くとどうなるのかを、国の資料で確かめます。使うのは、労働者派遣法と厚生労働省の業務取扱要領、国土交通省の監理技術者制度運用マニュアル、施工管理技術検定の受検の手引、厚生労働省による労働者派遣事業報告の集計です。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 派遣できる仕事 | 施工管理は派遣できる。現場で作業に直接従事する「建設業務」は派遣できず、一部に含まれるだけでも違法になる |
| 就けない立場 | 主任技術者・監理技術者・監理技術者補佐には、派遣社員は就けない |
| 資格の実務経験 | 派遣で施工管理をした期間も、技術検定の実務経験に数えられる |
| 雇用の形 | 建築・土木・測量技術者の派遣社員の70.5%が無期雇用。無期雇用なら3年の期間制限はかからない |
| 派遣料金と賃金 | 建築・土木・測量技術者では、派遣料金の62.7%が派遣社員の賃金になっている |
| 給料の下限 | 建築・土木・測量技術者の派遣社員の97.6%が対象になる労使協定方式では、国が職種別に示す賃金以上を払う決まり。建築施工管理技術者は未経験相当で時給1,503円 |
施工管理は派遣できる。現場の作業は派遣できない
労働者派遣法は、派遣会社が労働者を派遣してはならない業務の一つに「建設業務」を挙げています。建設業務とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業、またはこれらの準備の作業に関わる業務です(労働者派遣法第4条第1項第2号)。
一方で、施工管理はこの建設業務に当たりません。厚生労働省が派遣の許可や指導の基準をまとめた「労働者派遣事業関係業務取扱要領」は、次のように書いています。
土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるものであるので留意すること。
出典:労働者派遣事業関係業務取扱要領 第2 適用除外業務等(厚生労働省)
派遣できないのは、建設工事の現場で直接作業に従事する仕事に限られます。同じ要領は、派遣社員の仕事の一部に建設業務が含まれている場合も違法な派遣になるとしています。職人の手が足りないからといって、派遣の施工管理が資材を運んだり、型枠を組んだりすることは、少しの時間でも認められていません。
この決まりを守る責任は、派遣先の建設会社にもあります。派遣先が派遣社員を建設業務に従事させた場合、派遣先はその派遣社員に労働契約を申し込んだものとみなされます(労働者派遣法第40条の6。違反に当たると知らず、知らなかったことに過失もない場合を除く)。
主任技術者・監理技術者には、派遣社員は就けない
建設業法は、工事現場ごとに主任技術者か監理技術者を置くよう建設会社に求めています(施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理)。この技術者は、工事を請け負った会社と「直接的かつ恒常的な雇用関係」にある人でなければなりません。国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルは、派遣社員がこれに当たらないことをはっきり書いています。
直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいい、在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない。
出典:監理技術者制度運用マニュアル 二-四(2)(国土交通省)
このマニュアルでいう「監理技術者等」には、主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐の3つが含まれます。派遣社員は、1級や2級の施工管理技士の資格を持っていても、このどれにも就けません。厚生労働省の業務取扱要領も、専任の主任技術者と監理技術者は派遣の対象にならないと書いています。
「派遣の施工管理はキャリアに天井がある」と言われるのは、主にこの決まりのためです。派遣のままでは、現場の技術上の管理をつかさどる立場として名前が出ることはありません。担当できるのは、主任技術者や監理技術者の下で工程や品質、安全の管理を支える仕事です。
業務委託で施工管理の仕事を受けるフリーランスも、建設会社との雇用関係がないので、同じように主任技術者や監理技術者にはなれません(施工管理で独立するには? 許可の要件とフリーランスを法律で見る)。
派遣の許可を持たない会社が、請負や業務委託の名前で人を送り込み、建設会社が直接指示している場合は、偽装請負として違法になります。派遣と請負の境目は、施工管理の業務委託は違法? 偽装請負になる働き方を法律で見るで整理しています。
建設会社の評価にも同じことが言えます。公共工事の入札で使われる経営事項審査では、技術職員として数えるのは、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、雇用期間を特に限定せずに常時雇用されている人です。派遣先の会社と雇用契約を結んでいない派遣社員は、派遣先の技術職員として数えられません。資格が経営事項審査の点数にどう結びつくかは、施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで説明しています。
派遣で施工管理をした期間も、資格の実務経験に数えられる
主任技術者にはなれなくても、派遣で施工管理をした経験は、施工管理技術検定の受検資格に使えます。建築と電気工事の技術検定を実施している建設業振興基金の受検の手引は、実務経験に数える「施工管理」を次のように定めています。
(1)施工管理:工事請負者の従業員(請負者自身が工事に従事する場合、派遣・出向等により一時的に請負者に所属する場合を含む)として、請負工事の施工を管理した経験
出典:2級建築施工管理技術検定・2級電気工事施工管理技術検定 新受検資格インターネット専用受検の手引(令和8年度)(一般財団法人 建設業振興基金)
手引は、人材派遣による建設業務を実務経験として認めていませんが、建築・電気工事の施工管理業務はこの例から除いています。1級の第二次検定で求められる「特定実務経験」でも、派遣の場合は派遣先の企業に所属しているものとみなして扱います。
注意したいのは、実務経験の証明です。派遣社員は、原則として派遣先に証明してもらいます。派遣先での証明が難しい場合は、派遣元の代表者等が証明できます。その場合は、受検者の氏名、派遣期間、派遣元、労働者派遣事業の許可番号、派遣先が分かる派遣契約書等の写しを追加で出す必要があります。
派遣の求人は「施工管理アシスタント」という名前で出ていることもあります。その場合も、証明してもらえるのは施工の管理に関わった期間だけです(施工管理アシスタントとは? 事務との違いと実務経験になる条件)。
派遣先は工事ごとに変わることがあるので、現場ごとに工事名、工期、発注者、請負金額、担当した仕事、監理技術者や主任技術者の氏名を控えておくと、申請のときに困りません。未経験から資格を取るまでの年数は、未経験から施工管理になれる? 資格なし・文系から技士への道で確かめています。なお、土木や管工事など他の種目は別の機関が技術検定を実施しているので、受検する種目の手引で確認してください。
施工管理の派遣社員は7割が無期雇用。3年の期間制限はかからない
派遣社員には、派遣会社と期間の定めのない契約を結ぶ「無期雇用派遣」と、契約期間が決まっている「有期雇用派遣」があります。厚生労働省が派遣会社の報告を集計した結果では、施工管理が含まれる「建築・土木・測量技術者」の派遣社員は、70.5%が無期雇用でした。派遣社員全体の43.5%を大きく上回ります。
| 業務 | 派遣社員数 | うち無期雇用 | うち有期雇用 |
|---|---|---|---|
| 建築・土木・測量技術者 | 46,815人 | 33,023人(70.5%) | 13,792人(29.5%) |
| 全業務 | 2,009,094人 | 874,747人(43.5%) | 1,134,347人(56.5%) |
無期雇用かどうかで大きく変わるのが、派遣の期間制限です。派遣先は、同じ事業所で3年を超えて派遣を受け入れることができません。事業所の労働組合などの意見を聴けば延長できますが(労働者派遣法第40条の2)、その場合も同じ派遣社員を同じ課などの組織単位で3年を超えて受け入れることはできません(第40条の3)。ただし、無期雇用の派遣社員などは、この制限の対象から外れています。
有期雇用の派遣社員が同じ組織単位で3年続けて働く見込みがある場合、派遣会社は、派遣先に直接雇用を申し込むよう求める、別の派遣先を紹介するなどの措置を講じなければなりません(第30条第2項)。3年たったら自動的に派遣先の社員になれるわけではない点に注意してください。
無期雇用なら、派遣先の工事が終わっても派遣会社との雇用契約は終わりません。求人を見るときは、まず無期雇用か有期雇用かを確かめてください。
派遣料金のうち、派遣社員の賃金になるのは約6割
派遣先の建設会社は派遣会社に派遣料金を払い、派遣会社はそこから派遣社員に賃金を払います。厚生労働省の集計では、令和6年度の建築・土木・測量技術者の派遣料金は1日8時間あたり34,168円、派遣社員の賃金は21,429円でした。
| 業務 | 派遣料金(8時間換算) | 派遣社員の賃金(8時間換算) | 料金に占める賃金の割合 |
|---|---|---|---|
| 建築・土木・測量技術者 | 34,168円 | 21,429円 | 62.7% |
| うち無期雇用 | 34,593円 | 21,615円 | 62.5% |
| うち有期雇用 | 33,120円 | 20,839円 | 62.9% |
| 全業務平均 | 26,257円 | 16,735円 | 63.7% |
派遣料金と賃金の差は、1日あたり12,739円です。ただし、この差がすべて派遣会社の利益になるわけではありません。派遣料金には消費税が含まれていますし、派遣会社が負担する社会保険料なども、この差の中から払われます。会社が負担する社会保険料は、月給30万円の人で月4万6千円ほどです(40〜64歳・東京都・令和8年度の料率。法定福利費・社会保険料の会社負担 計算ツールで計算)。
派遣会社は、事業所ごとの派遣料金の平均額と派遣社員の賃金の平均額を、インターネットなどで公開しなければなりません。料金から賃金を引いた額が料金に占める割合(マージン率)も公開の対象です(労働者派遣法第23条第5項、同法施行規則第18条の2)。複数の派遣会社を比べるときは、この数字を並べてみると、料金のうちどれだけが賃金に回っているかが分かります。
給料の下限は、国が職種別に示している
派遣社員の賃金の決め方には、派遣先の社員との均衡で決める方法と、派遣会社が労働者の代表と結ぶ労使協定で決める方法(労使協定方式)があります。令和7年6月1日現在の集計では、建築・土木・測量技術者の派遣社員の97.6%が労使協定方式の対象でした。
労使協定方式では、同じ種類の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額と同等以上にすることが条件になっています(労働者派遣法第30条の4第1項第2号イ)。この「一般賃金」の額は、厚生労働省が毎年度、職種別の通知で示しています。令和8年度の通知には「建築施工管理技術者」と「土木施工管理技術者」の区分があります。
| 勤続年数 | 建築施工管理技術者 | 土木施工管理技術者 | 職業計 |
|---|---|---|---|
| 0年(基準値) | 1,503円 | 1,621円 | 1,289円 |
| 1年 | 1,710円 | 1,845円 | 1,467円 |
| 3年 | 1,876円 | 2,023円 | 1,609円 |
| 5年 | 2,008円 | 2,166円 | 1,722円 |
| 10年 | 2,145円 | 2,313円 | 1,839円 |
| 20年 | 2,666円 | 2,876円 | 2,287円 |
0年の基準値は、ハローワークが受理した無期雇用・フルタイムの求人の賃金の下限額の平均を時給に換算し、賞与分を加えたものです。未経験者の賃金に当たる額として使われています。1年目以降の額は、勤続年数ごとの賃金の伸びを表す「能力・経験調整指数」を掛けて出しています。
週40時間・年52週で年額にすると、建築施工管理技術者の0年は約313万円、3年は約390万円、10年は約446万円です(当サイト計算)。実際の下限は、この額に就業場所の地域ごとの指数を掛けて決まります。時間外・休日・深夜の手当は、この額に含まれません。派遣会社は賃金構造基本統計調査をもとにした別の表(別添1)を使うこともできるので、どの表と職種で協定を結んでいるかは派遣会社ごとに違います。
この表は下限を決めるためのもので、実際の賃金の相場を表すものではありません。正社員を含む施工管理の年収は、施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で見ています。
派遣で働く前に確かめること
ここまでの決まりを踏まえると、派遣の施工管理が向いているかどうかは、この先どの立場を目指すかで分かれます。主任技術者や監理技術者として現場を任されたいなら、いずれ建設会社に直接雇用される必要があります。資格の受検に必要な実務経験を積みたい、いろいろな現場を経験したいという段階なら、派遣でも目的は果たせます。
派遣会社や求人を比べるときは、次の点を確かめてください。
- 無期雇用か有期雇用か:有期雇用なら、工事の終了や3年の期間制限で派遣先が変わることがあります。
- マージン率と賃金の平均額:派遣会社が公開している数字です。労使協定を結んでいるか、協定の対象になる派遣社員の範囲、協定の有効期間の終わりも、あわせて公開することになっています。
- 仕事の範囲が施工管理に限られているか:派遣先で作業の手伝いを求められたときに、派遣会社が対応してくれるかも聞いておくと安心です。
- 実務経験を誰が証明するか:派遣先の証明が難しい場合に、派遣元が証明と派遣契約書等の写しの用意に協力してくれるかを確かめます。
- 直接雇用に移る道があるか:派遣会社が派遣先への職業紹介を予定して行う「紹介予定派遣」という形もあります(労働者派遣法第2条第4号)。
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今の会社で正社員として施工管理をしていて、派遣への転職を考えている人は、施工管理を辞めたいときは? 辞める前に確かめる5つのことも参考にしてください。派遣以外の転職先は、施工管理からの転職先は? 同業・発注者側・異業種の3つの道で整理しています。
数字を読むときに気をつけること
- 労働者派遣事業報告の「建築・土木・測量技術者」には、施工管理の他に設計や測量の技術者も含まれます。施工管理だけの数字ではありません。
- 派遣社員数は令和7年6月1日現在、派遣料金と賃金は令和6年度の報告を集計したもので、いずれも速報値です。
- 一般賃金の表は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに適用される額です。毎年度更新されます。
- 無期雇用・有期雇用の割合、料金に占める賃金の割合、一般賃金の年額は、当サイトの計算です。
参考にした資料
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第2条・第4条・第23条・第30条・第30条の4・第40条の2・第40条の3・第40条の6)|e-Gov法令検索
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(第18条の2)|e-Gov法令検索
- 労働者派遣事業関係業務取扱要領|厚生労働省(第2 適用除外業務等、令和8年7月31日適用版)
- 監理技術者制度運用マニュアル|国土交通省(最終改正 令和6年12月13日)
- 経営事項審査の事務取扱いについて|国土交通省
- 2級建築施工管理技術検定・2級電気工事施工管理技術検定 新受検資格インターネット専用受検の手引(令和8年度)|一般財団法人 建設業振興基金
- 1級建築施工管理技術検定・1級電気工事施工管理技術検定 新受検資格インターネット専用受検の手引(令和8年度)|一般財団法人 建設業振興基金
- 労働者派遣事業の事業報告の集計結果について|厚生労働省(令和6年度事業報告の集計結果、令和7年6月1日現在の状況)
- 令和8年度の「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」等について|厚生労働省 職業安定局長通知(令和7年8月25日)
