「施工管理 ホワイト企業」で検索すると、ランキングや見分け方のページが並びます。ただ、そこに書かれている「風通しがよい」「アットホーム」といった言葉は、求人票を見ても確かめようがありません。

この記事では、言葉ではなく確かめられるものだけを集めました。建設業には、会社が人に何をしているかを国が点数にする仕組みがあります。経営事項審査です。さらに求人票に何を書かなければならないかも法律で決まっています。その二つを使って、外から会社を見る方法を整理します。

確かめたこと分かったこと
「ホワイト企業」の定義法律にはない。だから確かめられる事実に置き換えて見るしかない
社会保険建設業の許可がある時点で、雇用保険・健康保険・厚生年金には入っている(2020年10月から許可の要件)
会社が人にしていること経営事項審査のW1(担い手の育成及び確保)で77点満点。退職金15点、法定外労災15点、CPD10点、えるぼし等の認定5点など
点数の重み総合評定値PのうちWのウェイトは0.15。完成工事高(0.25)や技術力(0.25)より小さいが、会社の姿勢が出る
点数は見られるか経審の結果は公表されている(建設業情報管理センター)。ただし受けているのは公共工事を直接請け負おうとする会社だけ
求人票業務の内容・賃金・労働時間の明示は義務(職業安定法第5条の3)。2024年4月からは就業場所と業務の「変更の範囲」も明示する
書いてあることの重み明示した労働条件を事実と異なるものとしてはならない(労働基準法施行規則第5条第2項)
出典:建設業法、職業安定法、労働基準法施行規則、国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」をもとに当サイト作成。

「ホワイト企業」に法律の定義はない

先に確かめておくと、ホワイト企業という区分は法律にありません。国が認定しているのは、個別の取組についての制度です。若者の採用・育成に積極的な企業を認定するユースエール、女性の活躍を進める企業を認定するえるぼし、子育て支援に取り組む企業を認定するくるみん。どれも根拠となる法律が別々にあります。

それぞれの根拠は別の法律にあります。

認定根拠となる法律何を認定しているか
えるぼし(第1段階〜第3段階・プラチナえるぼし)女性の職業生活における活躍の推進に関する法律女性の活躍推進の取組が優良であること
くるみん(トライくるみん・プラチナくるみん)次世代育成支援対策推進法子育て支援の取組が一定の基準を満たすこと
ユースエール青少年の雇用の促進等に関する法律若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況が優良であること
出典:経営事項審査でワーク・ライフ・バランスの取組として加点対象になる認定(国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」)。認定はいずれも厚生労働省が行います。

この3つは、あとで出てくる建設業の審査でも加点の対象になっています。つまり「ホワイトかどうか」を調べようとすると、確かめられる事実に置き換える作業が要ります。この記事で使うのは、建設業だけにある仕組みです。

建設業の許可がある時点で、社会保険には入っている

最初に、心配しなくてよくなった項目があります。社会保険です。2026年7月からの経営事項審査の改正で、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況を審査する項目が削除されました。国土交通省は、その理由をこう説明しています。

建設業の許可そのものにも、確かめる意味があります。許可の基準は建設業法第7条にあり、4つです。経営業務の管理を適正に行う能力があること、営業所ごとに専任の営業所技術者を置くこと、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかでないこと。500万円以上の工事(建築一式工事は1,500万円以上)を請け負うには、この許可が要ります。

改正前は、未加入だと1項目につき40点の減点でした。その減点がなくなったのは、建設業の許可を持っている会社なら社会保険に入っているはずだからという理屈です。逆にいえば、社会保険がないと言われた場合、その会社が建設業の許可を持っているかどうかから疑う必要があります。

会社が人にしていることは、経営事項審査で点数になっている

経営事項審査は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査です(建設業法第27条の23)。審査する項目は法律と告示で決まっていて、5つの区分から総合評定値が計算されます。

区分審査項目ウェイト
X1経営規模(完成工事高)0.25
X2経営規模(自己資本額・利払前税引前償却前利益)0.15
Y経営状況(負債抵抗力・収益性・財務健全性など)0.20
Z技術力(技術職員数・元請完成工事高)0.25
Wその他の審査項目(社会性等)0.15
出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」。総合評定値Pは 0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W で計算されます。

このうちWが、会社の姿勢が出るところです。Wは8つの項目に分かれています。

項目内容最高点/最低点
W1建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況77/0
W2建設業の営業継続の状況(営業年数60/0、民事再生法・会社更生法の適用0/-60)60/-60
W3防災活動への貢献の状況20/0
W4法令遵守の状況0/-30
W5建設業の経理の状況(監査の受審状況20/0、公認会計士等数10/0)30/0
W6研究開発の状況25/0
W7建設機械の保有状況15/0
W8国または国際標準化機構が定めた規格による認証・登録の状況10/0
合計—237/-90
出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」。改正前の最低点は-210点で、社会保険の未加入による減点(3項目×-40点)がなくなった分だけ-90点に変わりました。

W1が最も配点が大きく、77点が満点です。中身は次の通りです。

W1の評価項目配点何を見ているか
建退共の加入状況15点建設業退職金共済制度に加入しているか
退職一時金もしくは企業年金制度の導入15点退職金制度や企業年金があるか
法定外労災制度の加入状況15点労災保険の上乗せ補償に入っているか
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況2点技術職員に占める若年層の割合が15%以上か、新規に採用したか
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況10点技術者がCPD(継続教育)の単位をどれだけ取っているか
ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況5点えるぼし・くるみん・ユースエールの認定を受けているか
就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況10点建設キャリアアップシステムで就業履歴を蓄積しているか
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無5点2026年7月に新設。宣言書と誓約書を出しているか
出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」。配点は最高点で、いずれも最低は0点です。

この表は、そのまま「会社が人にいくら投資しているか」の一覧になっています。退職金があるか、労災の上乗せがあるか、若手を採って育てているか、技術者が学び続けているか、育児や女性活躍の認定を取っているか。求人票の言葉では分からないことが、点数になっています。

W1以外にも見どころがあります。W2は建設業の営業年数で最高60点、ただし民事再生法や会社更生法の適用を受けていると60点の減点です。W4は法令遵守の状況で、こちらは加点がなく、減点だけ(0点から-30点)です。建設業法違反で指示処分や営業停止を受けた会社は、ここで点を引かれます。

その点数は公表されていて、誰でも見られる

経営事項審査の結果は、一般財団法人建設業情報管理センターが「経審結果の公表」として検索できるようにしています。会社名から、その会社の総合評定値や各項目の点数を確かめられます。

もう一つ、国土交通省の建設業者検索では、許可番号、許可を受けている業種、許可年月日を調べられます。志望する会社がどの業種の許可を持っているかは、自分が積める実務経験に直結します。業種と資格の関係は施工管理の資格とは? 7種類の技士と29業種の対応を法律で整理で29業種について数えました。

ただし、大きな限界があります。経営事項審査を受けているのは、公共工事を直接請け負おうとする会社だけです。民間工事を専門にしている会社は受けていないので、点数そのものが存在しません。その場合は、次の求人票の見方に頼ることになります。会社の規模による違いはゼネコンの施工管理とは? 大手と中小の違いを法律と統計で見るで整理しています。

求人票に書かれているはずのことは、法律が決めている

求人を出す側には、明示しなければならない事項があります。

公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

出典:職業安定法 第5条の3 第1項(e-Gov法令検索)

採用が決まって労働契約を結ぶ段階では、労働基準法の側の決まりが働きます。明示しなければならない労働条件は施行規則で並んでいて、2024年4月から項目が増えました。施工管理の仕事にとって大きいのは、次の一つです。

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)

出典:労働基準法施行規則 第5条 第1項第1号の3(e-Gov法令検索)

施工管理は現場が変わる仕事です。どこまで動く可能性があるのか、どの業務まで任される可能性があるのか。その範囲を示すことが、2024年4月から求められています。入社後に「全国転勤だとは聞いていない」という食い違いが起きやすい職種なので、ここは必ず確かめる価値があります。

そして、同じ施行規則の第2項は短い一文です。使用者は、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。求人票に書かれた年間休日や残業時間は、飾りではなく、事実であることが求められています。

賃金の欄では、固定残業代の扱いに注意します。月給に何時間分の残業代が含まれているのかが書かれていれば、その時間は会社が見込んでいる残業時間です。実際の労働時間がどう推移しているかは施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見る、残業が少ない会社の条件は施工管理は「意外と楽」? 残業が少ない会社の条件を国の調査で見るで見ています。

会社を確かめる順番

ここまでの方法で分かるのは、制度として何があるかまでです。実際に有給が取れるか、現場の人間関係がどうかは、外からは見えません。すでに経験がある人は、建設業界専門の転職エージェントの面談で、候補になる会社の内情や離職の状況を聞く方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談

数字を読むときに気をつけること

参考にした資料