「女性の施工管理」を調べると、「細かいところに気づける」「女性ならではの気配りが生きる」といったメリットの説明がたくさん出てきます。ただ、何人くらいの女性が働いていて、年収は男性とどれくらい違い、妊娠したら現場の仕事はどうなるのか、という点を数字や法律で確かめられる記事は多くありません。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査と雇用均等基本調査、国土交通省の調査、労働基準法と女性労働基準規則を使って、女性の施工管理の現状を確かめます。

確かめたこと分かったこと
どれくらいいるか建築技術者の14.3%、土木技術者の8.2%が女性。建築技術者の女性は34歳以下が半数を超える
年収建築技術者の25〜29歳では男性の92.5%。40代では約7割まで差が開く
体力面の決まり妊娠中・産後1年以内でない女性に法律で禁じられているのは、重量物を扱う業務と一部の有害物に関わる業務だけ
妊娠中高さ5メートル以上で墜落のおそれがある場所の業務や、足場の組立てには就けない
育休建設業で出産した女性の育休取得率は、年によって66.9〜89.1%と大きく動く
トイレ女性が快適に使えるトイレが「概ね整備されている」は、国発注の公共工事で63%、民間工事で33%
出典:本文で紹介する各資料をもとに当サイト作成。

施工管理の女性は、建築で7人に1人。20代が中心

国の統計には「施工管理」という職種がありません。賃金構造基本統計調査では、建築施工管理技術者や建築現場監督は「建築技術者」に、土木施工管理技術者や土木現場監督は「土木技術者」に含まれます。建築技術者には建築士や建築設計技術者も入るので、現場の施工管理だけの数字ではない点に注意してください。職種の分け方は施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で説明しています。

令和7年の調査(従業員10人以上の企業で働く、パートなどを除いた労働者の推計)で男女の人数を比べると、建築技術者の女性は約5万3,360人で全体の14.3%でした。土木技術者の女性は約2万5,340人で8.2%です。

目立つのは年齢の違いです。建築技術者の女性の平均年齢は36.8歳で、男性の44.5歳より8歳ほど若くなっています。34歳以下の割合は、女性が54.9%、男性が32.2%でした。女性で人数が一番多い年代は25〜29歳です。土木技術者でも、34歳以下は女性47.5%、男性27.1%で、同じ傾向が見られます。

採用の数字からも、若い世代で女性が増えていることがうかがえます。国土交通省が2024年に業界団体を通じて行った調査では、回答した1,609社の技術者(設計者を含む)のうち女性は10%でしたが、2024年度に採用した技術者に限ると女性は20%でした。この調査では、技術者を施工管理や設計、測量などに従事する人、技能者を建設工事の施工に直接従事する人としています。

一方で、建設業で働く女性全体から見ると、技術者はまだ少数です。国土交通省の実行計画によると、建設業に従事する女性約88万人のうち、技術者は3.4%、技能者は13.6%にとどまります。建設業全体では技術者が7.9%、技能者が62.9%です。建設業で働く女性の8割以上は、技術者でも技能者でもない仕事に就いていることになります。

年収は20代では近く、40代で差が開く

同じ令和7年の賃金構造基本統計調査で年収の目安を計算すると、建築技術者の女性は約526万円、男性は約704万円でした。土木技術者は女性が約485万円、男性が約637万円です。年収の目安は「きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額」で、当サイトの計算です。

ただ、先ほど見た通り女性は平均年齢が若いので、全体の平均どうしを比べると差が大きく出ます。そこで、同じ年代どうしで比べました。

年代建築技術者 男性建築技術者 女性女性は男性の何%か(建築)女性は男性の何%か(土木)
20〜24歳約431万円約366万円84.8%97.4%
25〜29歳約560万円約518万円92.5%90.0%
30〜34歳約650万円約570万円87.8%88.4%
35〜39歳約734万円約585万円79.8%88.7%
40〜44歳約775万円約546万円70.4%72.7%
45〜49歳約796万円約550万円69.1%68.6%
50〜54歳約830万円約606万円73.1%63.9%
55〜59歳約895万円約709万円79.2%68.3%
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種(小分類)第7表(企業規模10人以上)をもとに当サイト計算。年収の目安=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額。

建築技術者の25〜29歳では、女性の年収は男性の92.5%です。残業代を含まない所定内給与に限ると96.6%まで近づき、残りの差には残業時間の違い(女性23時間、男性30時間)も関わっています。

差が開くのは35歳を過ぎてからです。建築技術者の35〜39歳では、女性の平均勤続年数は11.1年で男性の10.3年より長いのに、所定内給与は男性の83.8%でした。40〜44歳では所定内給与が75.5%、年収の目安が70.4%まで下がります。土木技術者も、35〜39歳の88.7%から40〜44歳の72.7%へと、同じところで差が広がります。

この統計からは、差が開く理由までは分かりません。役職、資格、担当している仕事(設計か現場か)などの違いが考えられますが、分けて集計されていないためです。手がかりの一つとして、雇用均等基本調査(令和6年度)では、建設業の課長相当職以上に占める女性の割合は9.6%で、産業全体の13.1%を下回っています。

体力面で法律が女性に禁じているのは「重量物」と一部の有害物だけ

「施工管理は体力的に女性には無理」と言われることがあります。法律上、妊娠中・産後1年以内でない女性を就かせてはならない業務は、女性労働基準規則で2つだけに限られています。

法第六十四条の三第二項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第一項第一号及び第十八号に掲げる業務とする。

出典:女性労働基準規則 第3条(e-Gov法令検索)

第2条第1項第1号は重量物を取り扱う業務で、18歳以上なら断続作業で30キログラム以上、継続作業で20キログラム以上の重さが対象です。第18号は、鉛やトルエン、キシレンなど決められた有害物を発散する場所での一部の業務です。

施工管理の仕事の中心は、工程・品質・原価・安全などの管理です(施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理)。現場を歩いて確認する時間は長いものの、30キログラムの資材を運び続けることは本来の仕事ではありません。体力面のきつさを考えるときは、労働時間や休日の数も合わせて見る必要があります。労働時間の実際は施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見るで見ています。

妊娠中は、高所や足場の組立てなどの業務に就けない

妊娠中と産後1年以内の女性(妊産婦)については、就かせてはならない業務の範囲が大きく広がります。労働基準法第64条の3と女性労働基準規則第2条が根拠で、施工管理の現場に関わりそうなものには次の業務があります。

業務(女性労働基準規則 第2条第1項)妊娠中産後1年以内
第13号 土砂が崩壊するおそれのある場所、または深さが5メートル以上の地穴における業務就かせてはならない制限なし
第14号 高さが5メートル以上の場所で、墜落により危害を受けるおそれのあるところにおける業務就かせてはならない制限なし
第15号 足場の組立て、解体または変更の業務(地上または床上での補助作業を除く)就かせてはならない本人が申し出たら就かせてはならない
第20号・第22号 著しく暑熱な場所、著しく寒冷な場所における業務就かせてはならない本人が申し出たら就かせてはならない
第24号 さく岩機、鋲打機など身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務就かせてはならない就かせてはならない
出典:女性労働基準規則 第2条をもとに当サイト作成(一部の号を抜き出したもの)。

労働基準法には他にも決まりがあります。妊娠中の女性が請求すれば、会社は軽易な業務に転換させなければなりません(第65条第3項)。妊産婦が請求すれば、時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならないとも定めています(第66条)。

使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

出典:労働基準法 第65条第3項(e-Gov法令検索)

高い足場の上や深い掘削の中を確認して回る現場では、妊娠が分かった時点で、担当する場所や仕事の分け方を会社と話し合う必要があります。国土交通省と業界団体が2025年3月に策定した実行計画でも、こうした就業制限の周知と教育の徹底が取組の一つに挙げられています。

建設業の女性の育休取得率は、年による振れが大きい

雇用均等基本調査(事業所調査)は、1年間に出産した女性のうち、調査時点までに育児休業を始めた人(申し出ている人を含む)の割合を産業別に公表しています。3年分を見ると、建設業の数字は年によって大きく動いています。

調査年度女性 建設業女性 産業全体男性 建設業男性 産業全体
令和4年度75.8%80.2%15.5%17.1%
令和5年度89.1%84.1%29.7%30.1%
令和6年度66.9%86.6%35.5%40.5%
出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」令和4〜6年度 事業所調査 付属統計表(育児休業者割合)。常用労働者5人以上の民営事業所が対象。男性は配偶者が出産した人に占める割合。

令和6年度の建設業は66.9%で産業全体より20ポイント近く低い一方、令和5年度は89.1%で産業全体を上回っていました。1年分の数字だけで「建設業は育休が取れない」とも「取れる」とも言い切れません。

働いている人に直接聞いた調査もあります。国土交通省が2025年7〜8月に建設業で働く人へ行ったWEBアンケートでは、出産・育児の経験がある女性973人のうち、育児休業・休暇を取ったことが「ある」人は66.1%でした。取った人の期間は、6か月〜1年未満が40.9%、1年以上が40.4%です。国土交通省はこの結果を次のようにまとめています。

産休、育休については、男性で概ね7割、女性で3割の方が取得していない。
取得していない理由には、制度がなかった、という声があり、制度の整備に課題がある

出典:建設産業における人材確保・定着に向けた出産・育児等と仕事の両立支援パンフレット(国土交通省・令和8年3月)

このアンケートの回答者は施工管理に限らず、技能者や事務の人も含みます。過去の出産の経験も含めて答える形式なので、今の取りやすさとは差がある可能性もあります。

現場のトイレは、公共工事と大きな会社ほど整っている

現場のトイレは、女性の施工管理が気にすることの一つです。労働安全衛生規則第628条は、事業者に男性用と女性用を区別した便所を設けるよう定めています。ただし第628条の2で、同時に働く労働者が常時10人以内なら、男女で区別しない独立した個室の便所1つで足りると定めています。

実際にどれくらい整っているかは、工事の発注者と会社の規模で大きく違います。国土交通省の2024年の調査で、女性が快適に利用できるトイレ(快適トイレや女性専用トイレ、清潔に保たれた男女兼用トイレなど)の設置状況を聞いた結果です。

工事の種類「概ね整備されている」全体従業員1〜29人の会社従業員500人以上の会社
公共工事(国発注)63%49%75%
公共工事(都道府県発注)61%51%73%
公共工事(市町村発注)47%35%73%
民間工事33%20%67%
出典:国土交通省「令和6年度建設産業における女性定着促進に関する実態等調査結果(アンケート調査)」問7-1(n=1,609社・2024年9月下旬〜10月上旬)。

小さな会社が請け負う民間工事では、「概ね整備されている」は20%にとどまります。整備されていないと答えた会社の7割以上は、その理由に「現場に女性がいない」を挙げていました。女性がいないから設置せず、設置されていないから女性が入りにくい、という順番になっている現場があることがうかがえます。

公共工事と民間工事で働き方に差があるのは、トイレだけではありません。休日の取りやすさの違いは施工管理は「意外と楽」? 残業が少ない会社の条件を国の調査で見るで見ています。

会社ごとの男女の賃金差は、国のデータベースで確かめられる

ここまでの数字は業界全体の傾向で、会社によって大きく違います。応募や転職を考えている会社の状況は、次の公表制度で確かめられます。

面接や面談で聞いておきたいのは、女性の技術者が何人いて何年目まで続いているか、妊娠した人がどの仕事を担当したか、担当する現場のトイレがどうなっているか、の3つです。入ってからの働き方を具体的に想像しやすくなります。

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これから施工管理を目指す人は、未経験から施工管理になれる? 資格なし・文系から技士への道で入り方を見ています。今の職場で続けるかどうか迷っている人は、施工管理を辞めたいときは? 辞める前に確かめる5つのことも参考にしてください。

数字を読むときに気をつけること

参考にした資料