「施工管理」と検索すると、「やめとけ」「きつい」という言葉が並びます。ただ、その理由として挙げられている長時間労働や休みの少なさ、人が辞めていく職場といった話が、数字でどこまで確かめられるのかは、あまり書かれていません。
この記事では、厚生労働省の統計と、建設会社の職員でつくる労働組合の調査を使って、労働時間・休日・離職の三つを確かめます。先に断っておくと、国の統計には「施工管理」という区分がありません。建設業全体の数字と、施工管理に近い人たちを対象にした調査を、それぞれの範囲を示しながら並べていきます。
建設業の労働時間は、他の産業より長いのか
厚生労働省の毎月勤労統計調査で、2025年の1か月あたりの労働時間を産業別に見ます。事業所規模5人以上の事業所が対象です。
| 働き方 | 産業 | 総実労働時間 | うち所定外労働時間 | 出勤日数 |
|---|---|---|---|---|
| 全ての働き方 | 調査産業計 | 135.1時間 | 9.8時間 | 17.4日 |
| 建設業 | 159.8時間 | 12.8時間 | 19.6日 | |
| 一般労働者 | 調査産業計 | 160.5時間 | 13.2時間 | 19.2日 |
| 建設業 | 164.3時間 | 13.5時間 | 20.0日 |
全ての働き方を合わせた数字では、建設業は調査産業計より月に24.7時間長くなっています。ただ、この差の多くは、パートタイムで働く人の割合の違いから来ています。短い時間で働く人が多い産業ほど、平均の労働時間は短く出るからです。
そこでパートタイムを除いた一般労働者どうしで比べると、差は月に3.8時間まで縮みます。残業にあたる所定外労働時間は、建設業の方が0.3時間長いだけで、ほとんど変わりません。はっきり違うのは出勤日数で、建設業は月に0.8日多く出勤しています。12か月分に直すと、年に10日ほど多い計算です。
建設業全体で見る限り、「残業が極端に多い産業」とまでは言えません。目立つのは、休みの少なさの方です。一方で、この数字には現場の職人も、事務の職員も、施工管理も含まれています。施工管理だけを取り出した数字ではない点は、次の調査で補います。
現場に出ている職員の残業は、全産業の約3倍
施工管理に近い人たちの数字として使えるのが、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)の時短アンケートです。34の建設会社の職員組合、約3万9千人の組合員でつくる団体で、加盟組合には清水建設・戸田建設・西松建設・五洋建設などゼネコンの職員組合が並びます。調査は1972年から続いていて、回答者は毎年1万8千人前後です。
この調査は、現場で工事を管理する「外勤」と、支店や本社で働く「内勤」を分けて集計しています。外勤の建築・土木が、施工管理に最も近い区分です。
| 区分 | 2013年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 外勤(建築) | 87.3時間 | 41.0時間 |
| 外勤(土木) | 82.5時間 | 38.6時間 |
| 内勤(建築) | 47.8時間 | 22.6時間 |
| 回答者全体 | 63.1時間 | 29.2時間 |
| 全産業(毎月勤労統計調査から引用) | — | 13.6時間 |
2025年11月の外勤(建築)の所定外労働時間は41.0時間でした。同じ資料が引用している全産業の13.6時間と比べると、約3倍です。建設業全体の統計では目立たなかった残業の多さが、現場に出ている職員に絞ると、はっきり表に出てきます。
もう一つ読み取れるのは、その残業が12年で半分以下に減っていることです。外勤(建築)は2013年に87.3時間ありました。「きつい」という評判の中身は、10年前と今とで同じではありません。
ただし、この調査の回答者は労働組合のある建設会社の職員です。規模の大きな会社が中心なので、中小の建設会社で働く施工管理の実態は、ここからは分かりません。
休みは取れているのか
同じ日建協の調査によると、2025年11月の休日数12日に対して、外勤の職員が実際に休めたのは11.0日でした。内勤は11.7日です。
現場の休みを左右するのが、工事を受注したときに決める閉所の設定です。4週間に8日現場を閉める「4週8閉所」で受注した工事の割合は、2025年に着工した工事で、建築が81.6%、土木が88.0%でした。完全な週休2日の現場が、多数派になりつつあります。ただ、4週8閉所の現場でも、書類の作業などで休日に出勤する人がいれば、休めた日数は閉所日数より少なくなります。
辞める人は多いのか
「やめとけ」と言われる職場なら、辞める人も多いはずです。厚生労働省の雇用動向調査と、新卒で就職した人の離職状況を並べます。
| 指標 | 建設業 | 全体 |
|---|---|---|
| 離職率(一般労働者・2025年) | 7.9% | 11.4% |
| 入職率(一般労働者・2025年) | 10.0% | 12.0% |
| 就職後3年以内の離職率(高卒・2022年3月卒業) | 41.4% | 37.9% |
| 就職後3年以内の離職率(大卒・2022年3月卒業) | 30.5% | 33.8% |
2025年の一般労働者の離職率は、建設業が7.9%で、産業全体の11.4%より低い水準でした。1年間に建設業へ入った人は約26万5千人、辞めた人は約22万3千人で、入った人の方が多くなっています。
ところが、新卒で入った人に絞ると、学歴で結果が分かれます。高卒で建設業に就職した人は、3年以内に41.4%が辞めていて、全産業の37.9%を上回ります。大卒は30.5%で、全産業の33.8%より低くなっています。
建設業全体では人が辞めやすい産業とは言えませんが、若いうちに高卒で入った人には辞める人が多い。この数字には施工管理以外の職種も含まれるので、そのまま施工管理の離職率とは読めません。それでも、「入ってすぐの数年が厳しい」という声とは合っています。
2024年4月から、残業に上限ができた
残業時間が減ってきた背景の一つが、法律による上限です。時間外労働の上限規制は、一般の業種では2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。建設業には5年間の猶予があり、2024年4月から適用されました。
時間外労働は原則として、月45時間、年360時間(限度時間)までとされています。ただし、臨時的な特別の事情がある場合には、36協定に特別条項を定めることで、限度時間を超えて労働させることができますが、その場合であっても、次の上限を遵守することが必要です。
出典:建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています(厚生労働省 建設業従事者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)
1 時間外労働、休日労働を合わせて1か月100時間未満
2 時間外労働、休日労働を合わせて2~6か月平均80時間まで
3 時間外労働は年720時間まで
4 1か月45時間を超える時間外労働は年6回まで
(ただし、災害時における復旧及び復興の事業では、1 2 の上限は適用されません。)
日建協の調査で外勤(建築)の残業が41.0時間だったのは、この規制が始まってから1年半ほど後の11月です。原則の上限である月45時間に近い水準にあたります。平均が上限の内側に収まっていても、繁忙期の現場や、人が足りない現場では、上限に近い月が続く人もいます。
数字で確かめられた「きつさ」と、分からないこと
ここまでの数字を整理します。
- 確かめられたこと。建設業は他の産業より出勤日数が多い。現場に出ている職員の残業は、全産業の約3倍ある。高卒で入った人の3年以内の離職率は、全産業より高い。
- 変わってきていること。現場に出ている職員の残業は、12年で半分以下になった。4週8閉所で受注する工事が8割を超えた。2024年4月からは、残業に法律の上限がある。
- 数字では分からないこと。中小の建設会社で働く施工管理の労働時間。施工管理だけに絞った離職率。職場の人間関係や、発注者との調整から来る精神的な負担。
「きつい」という評判には、数字で裏付けられる部分があります。同時に、その数字は年々変わっていて、会社の規模や現場によっても大きく違います。自分の職場に当てはめるなら、まず確かめたいのは次の三つです。先月の残業が月45時間の原則を超えていないか。担当している現場が何閉所で受注されているか。そして、この記事の数字が集められた大きな会社と、自分の会社の働き方がどれくらい違うのか、です。
施工管理が現場で担う仕事の中身は、施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理で扱っています。
参考にした資料
- 毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報|厚生労働省
- 令和7年 雇用動向調査結果の概要|厚生労働省
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)|厚生労働省
- 建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています|厚生労働省
- 2025時短アンケートダイジェスト|日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)
