施工管理で独立を考えるとき、最初に分けておきたいことがあります。自分の会社で工事を請け負うのか、施工管理の仕事だけを業務委託で受けるのか、という違いです。この二つは、かかわる法律も、必要なものも違います。

この記事では、建設業法と国土交通省のガイドラインから、許可なしで請け負える工事の範囲と、許可を取るための要件を確かめます。そのうえで、フリーランスの施工管理が就けない立場や、業務委託で働く人を守る法律、労災保険の扱いを整理します。独立した人がどれくらいいて、いくら稼いでいるのかは、総務省の就業構造基本調査で見ます。

確かめたこと分かったこと
許可がいらない工事1件500万円未満の工事(建築一式工事は1,500万円未満か、延べ150㎡未満の木造住宅)だけなら、建設業の許可はいらない
許可の要件技術の要件は、施工管理技士の資格か10年の実務経験で満たせる。経営の要件は、役員や個人事業主などとして建設業を経営した経験が5年以上必要
フリーランスの立場主任技術者・監理技術者は、建設会社と直接的で恒常的な雇用関係にある人に限られる。業務委託では就けない
業務委託を守る法律2024年11月から、取引条件を書面などで示すことと、報酬を60日以内に支払うことが発注側の義務になった
独立した人の数と稼ぎ建設業で本業がフリーランスの人は49.7万人で、産業の中で最も多い。年間所得(経費を引いた額)は300万円未満が48.6%
出典:建設業法・同施行令・同施行規則、国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」「監理技術者制度運用マニュアル」、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、総務省「令和4年就業構造基本調査」をもとに当サイト作成。

施工管理の「独立」は、2つの形に分かれる

施工管理の経験を持って会社を離れる形は、大きく二つあります。

形何を受けるか主にかかわる法律
自分で工事を請け負う発注者や元請から工事そのものを請け負い、職人や下請を手配して完成させる建設業法(許可・技術者の配置)
施工管理の仕事を受ける(フリーランス)建設会社から、工程・品質・安全の管理や書類の作成といった業務を委託されるフリーランス法(取引条件・支払期日)
当サイト作成。

前者は、自分が建設業者になる道です。工事の規模によっては許可が要り、許可を取るには経営の経験とお金の条件があります。後者は、建設業者に仕事を手伝う形で入る道です。許可はいりませんが、現場で就ける立場に制限があります。順に見ていきます。

500万円未満の工事だけなら、許可はいらない

建設業を営むには、原則として国土交通大臣か都道府県知事の許可が必要です(建設業法第3条第1項)。ただし、同じ条文のただし書で、政令で定める「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可はいりません。その範囲を決めているのが、建設業法施行令です。

法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。

出典:建設業法施行令 第1条の2 第1項(e-Gov法令検索)

同じ条の続きには、金額の数え方も書かれています。一つの工事を二つ以上の契約に分けて請け負っても、正当な理由がなければ合計額で判断します(第2項)。注文者が材料を出す場合は、その材料の市場価格や運送費も請負代金に加えます(第3項)。材料を支給してもらえば500万円に収まる、という数え方はできません。

許可なしで独立する人は、この範囲の工事を請け負うことになります。ただ、元請の会社が下請に許可を求めることもあるので、請けられる工事は金額だけでなく取引先の方針でも狭まります。

人を雇って元請に見積書を出す立場になると、雇っている作業員の社会保険料の会社負担分(法定福利費)を、見積書に内訳として書くことが求められます。国土交通省の作成手順では「労務費 × 法定保険料率」で出すのが基本で、都道府県ごとの率は法定福利費の計算ツールで確かめられます。

許可を取るには、施工管理の経験だけでは足りない

500万円以上の工事を請け負うには、許可が必要です。許可の基準は建設業法第7条にあり、国土交通省令とガイドラインが中身を決めています。一般建設業の許可について、主な要件をまとめると次のようになります。

要件中身施工管理の経験で満たせるか
経営の体制常勤役員等のうち1人が、建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を持つことなど(第7条第1号・規則第7条第1号)現場の経験は数えられない
営業所技術者営業所ごとに、1級・2級施工管理技士(第二次検定合格)などの資格者か、10年以上の実務経験がある人(指定学科を卒業した人は3年または5年)を専任で置く(第7条第2号・規則第7条の3)満たせる
お金自己資本が500万円以上か、500万円以上の資金を調達できること(第7条第4号・ガイドライン)関係しない
社会保険健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用事業所であれば、その届出をしていること(規則第7条第2号)関係しない
誠実性など請負契約で不正や不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと、欠格要件に当たらないこと(第7条第3号・第8条)関係しない
出典:建設業法第7条・第8条、建設業法施行規則第7条・第7条の3、国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」をもとに当サイト作成。営業所技術者になれる資格は、許可を受ける業種ごとに決まっています。

施工管理の経験がそのまま生きるのは、営業所技術者の要件です。施工管理技士の資格があれば、業種が合う限りこの要件を満たせます。資格がなくても、その業種の工事で10年以上の実務経験があれば満たせます。資格ごとの違いは施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで整理しています。

難しいのは経営の要件です。ガイドラインは、「経営業務の管理責任者としての経験」を次のように説明しています。

「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。

出典:建設業許可事務ガイドライン(国土交通省)

数えられるのは、役員や個人の事業主、支店長・営業所長のように、会社の外に対して取引の責任を持つ立場での経験です。現場所長として工事をまとめた経験は、施工管理としては重い経験でも、この定義には当たりません。

一方で、定義には「個人の事業主」が入っています。500万円未満の工事を個人事業主として請け負った期間は、経営業務の管理責任者としての経験に数えられる余地があります。許可なしで始めて経験を積み、5年たってから許可を取る、という順番が考えられるのはこのためです。経験の証明には書類が要るので、契約書や請求書、確定申告書は残しておく必要があります。

経営の要件を満たす人が営業所技術者の要件も満たしている場合、同じ営業所の中であれば1人で両方を兼ねられます(ガイドライン)。施工管理技士の資格を持つ人が5年の経営経験を積めば、1人で許可の要件のうち人の部分をそろえられることになります。

フリーランスの施工管理は、主任技術者にはなれない

もう一つの形が、施工管理の仕事を業務委託で受けるフリーランスです。この形で気をつけたいのは、現場で就ける立場です。

建設業法は、工事現場ごとに主任技術者か監理技術者を置くよう建設会社に求めています(第26条)。国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」は、この技術者に建設会社との雇用関係を求め、その中身を次のように書いています。

直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいい、在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない。

出典:監理技術者制度運用マニュアル(国土交通省・令和6年12月13日改正)

派遣社員でさえ直接の雇用関係にないとされる以上、雇用契約のない業務委託のフリーランスは、主任技術者や監理技術者として現場に置かれることはありません。マニュアルは「恒常的な雇用関係」も求めていて、公共工事で元請の専任の技術者になるには、入札の申込みの日より前に3か月以上の雇用関係が必要です。派遣の場合の扱いは施工管理の派遣はやめとけ? なれない立場と給料を法律と統計で見るで詳しく見ています。

そのため、フリーランスが受ける施工管理の仕事は、技術者を補佐する立場での管理や、書類・写真の作成といった業務が中心になります。技術者として名前が出る立場ではないので、経験を積んでも、その期間を技術検定の実務経験として証明してもらえるかは委託元しだいです。補佐の仕事が実務経験に数えられる条件は施工管理アシスタントとは? 事務との違いと実務経験になる条件で整理しています。

業務委託で受けるときに、法律が発注側に求めること

2024年11月1日から、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス法)が施行されています。従業員を使っていない個人や一人社長が、事業者から業務委託を受ける場合が対象です(第2条)。施工管理の業務を建設会社から委託されるフリーランスも、この形に当てはまります。

発注側の義務中身
取引条件の明示(第3条)業務委託をしたら直ちに、業務の内容・報酬の額・支払期日などを、書面かメールなどで示す
支払期日(第4条)従業員を使う発注者(役員が2人以上の法人を含む)は、役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その日までに支払う。定めがなければ、提供を受けた日が支払期日とみなされる
出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第2条〜第4条をもとに当サイト作成。

受ける側としては、現場に入る前に、業務の範囲と報酬、支払期日が書面かメールで示されているかを確かめることになります。口約束のまま始めた仕事は、この法律が求める形になっていません。

ただし、フリーランス法が守るのは、本当に事業者として働いている人です。契約は業務委託でも、建設会社の社員から日々の進め方を指示され、始業・終業や残業まで管理されているなら、実態は雇用に近くなります。その見分け方は、施工管理の業務委託は違法? 偽装請負になる働き方を法律で見るで確かめています。

もう一つ、契約の名前が業務委託でも、働き方の実態が雇用と変わらなければ、労働基準法上の労働者として扱われることがあります。勤務時間や仕事の進め方を細かく指示され、断る自由もない働き方であれば、業務委託という形そのものを見直す必要があります。

労災保険は、自分で特別加入する

会社員の間は、仕事中のけがは会社の労災保険で補償されます。独立するとこの補償はなくなり、自分で備える必要があります。そのための仕組みが、労災保険の特別加入です。

自分で工事を請け負う一人親方は、以前から特別加入の対象でした。労働者災害補償保険法施行規則は、対象の事業に「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」を挙げています(第46条の17第2号)。

2024年11月1日からは、企業などから業務委託を受けるフリーランスが、業種や職種を問わず特別加入できるようになりました(同条第12号)。どちらの区分でも、申込みは都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通して行います。他の区分で加入できる仕事は、その区分の団体に申し込むことになっているので、自分の仕事がどれに当たるかを団体に確かめてから加入します。

建設業のフリーランスは49.7万人、所得は300万円未満が半分

独立した人がどれくらいいるのかは、総務省の就業構造基本調査で分かります。2022年の調査から、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主又は一人社長であって、その仕事で収入を得る者」をフリーランスとして数えています。

区分本業がフリーランスの人有業者に占める割合
全産業209.4万人3.1%
建設業49.7万人(産業の中で最も多い)10.7%
学術研究,専門・技術サービス業36.7万人13.5%
サービス業(他に分類されないもの)18.2万人4.0%
出典:総務省「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」表6-2。

建設業で働く人の10人に1人は、本業がフリーランスです。ただし、職業で見ると、建設・土木作業や電気工事の仕事をしているフリーランスが42.2万人います(産業を問わない数)。建設業のフリーランスの多くは、職人として工事をする一人親方と考えられます。施工管理だけを取り出した数字は、この調査にはありません。

年間の所得も同じ調査で分かります。フリーランスのような自営業主の所得は、売上から必要な経費を差し引いた額です。

年間所得建設業全産業
300万円未満48.6%66.3%
300万〜499万円33.0%18.3%
500万円以上16.7%14.1%
出典:総務省「令和4年就業構造基本調査」第73表(本業がフリーランスの者)をもとに当サイト計算。所得が分からない人がいるため、合計は100%になりません。

建設業のフリーランスは、全産業と比べると300万円未満の割合が低く、300万〜499万円が多い形です。それでも、500万円以上は6人に1人です。職人が中心の数字なので、施工管理の経験を持って独立した人がこの分布のどこに入るかは分かりません。ただ、独立すれば会社員より稼げる、とこの統計から言うことはできません。

許可を持つ建設業者の数も、国土交通省が毎年まとめています。2026年3月末の許可業者は48万3,823業者で、2025年度に新しく許可を取った業者は1万8,121業者、許可が失効した業者は1万7,998業者でした。毎年、新しく入る会社とほぼ同じ数の会社が許可を手放しています。

独立する前に確かめること

独立ではなく、会社を移ることで働き方や収入を変える道もあります。施工管理の経験が生きる転職先は、施工管理からの転職先は? 同業・発注者側・異業種の3つの道で整理しています。仕事の中身がこれからどう変わるかは、施工管理の将来性は? AIでなくなるかを国の計画と法律で見るで確かめています。

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数字を読むときに気をつけること

参考にした資料