施工管理の求人を探していると、「業務委託」「フリーランス」の募集が目に入ります。日給や月額が社員より高く書かれていることも多く、気になっている人もいるはずです。一方で「業務委託の施工管理は違法」「偽装請負になる」という話も聞きます。

結論から言うと、業務委託そのものは違法ではありません。違法になるかどうかを分けるのは、契約書の名前ではなく現場での働き方の実態です。この記事では、労働者派遣法と国の告示、厚生労働省の判断基準から、どんな働き方が偽装請負になるのかを確かめます。建設現場ならではの事情、たとえば元請からの安全の指示がどう扱われるかも見ていきます。

確かめたこと分かったこと
業務委託は違法か違法ではない。ただし契約の名前ではなく実態で判断される
当てはまる法律会社から送り込まれた人なら「派遣か請負か」(告示37号)、個人で受けた人なら「労働者かどうか」(労働基準法9条)で判断する
偽装請負と判断される働き方発注者の社員が業務の進め方を直接指示し、始業・終業や残業を管理している
元請の安全の指示元請は下請の人に安全の指導をする義務がある(労働安全衛生法29条)。安全衛生上緊急の指示は、それだけで偽装請負とはされない
現場の作業時間工程の調整や近隣への騒音の配慮で時間が決まっているだけなら、指揮監督の根拠にならない
偽装請負だった場合発注者が労働契約を申し込んだものとみなされることがある(労働者派遣法40条の6)。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
出典:労働者派遣法、労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法、昭和61年労働省告示第37号、厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集」「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集」をもとに当サイト作成。

業務委託そのものは違法ではない。決め手は「実態」

施工管理の仕事を、雇用ではなく業務委託(請負や準委任)で受けること自体を禁じた法律はありません。実際に、建設会社から工程・品質・安全の管理や書類の作成を委託されて働くフリーランスの施工管理はいます。業務委託で働くときに発注側が守るべき取引のルールや、主任技術者になれない点は、施工管理で独立するには? 許可の要件とフリーランスを法律で見るで扱っています。

問題になるのは、契約書は業務委託なのに、中身が雇用や派遣と変わらない場合です。労働基準法は「労働者」を次のように定めています。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

出典:労働基準法 第9条(e-Gov法令検索)

ここには「雇用契約を結んだ者」とは書かれていません。厚生労働省の資料も、労働者に当たるかどうかは「請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断される」としています(労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集)。契約書に「業務委託」と書いてあっても、実態が雇用なら労働者として扱われます。

会社から来た人か、個人で受けた人かで、見る法律が違う

施工管理の業務委託には、大きく二つの形があります。どちらの形かで、違法かどうかを判断する物差しが変わります。

形よくある例違法になるとき主にかかわる法律
会社から送り込まれる施工管理の請負会社に雇われ、その会社が建設会社から受けた業務で現場に入る建設会社の社員が直接指示していて、実態が労働者派遣である(偽装請負)労働者派遣法、職業安定法、告示37号
個人で直接受けるフリーランスとして建設会社と業務委託契約を結び、現場に入る建設会社の指揮監督の下で働いていて、実態が雇用である労働基準法(労働者性の判断)
当サイト作成。「会社から送り込まれる」形では請負会社と施工管理者の間に雇用契約がある。「個人で直接受ける」形では雇用契約はなく、本人が事業者として契約する。

「偽装請負」という言葉は、主に一つ目の形で使われます。雇い主(請負会社)とは別の会社(建設会社)が実際に指揮命令しているなら、それは法律上の労働者派遣です。派遣には厚生労働大臣の許可や決められた契約の中身、派遣先の責任といったルールがあるので、請負の名前でそれを避ければ違法になります。

二つ目の形では、雇い主がそもそもいません。そのため問題は「派遣か請負か」ではなく、「この人は事業者なのか、建設会社の労働者なのか」になります。労働者だと判断されれば、残業代や有給休暇、解雇の規制など、労働基準法の守りがそのまま及びます。

会社から来た人は、告示37号の「管理」を誰がしているかで決まる

派遣と請負の境目は、国の告示で具体的に決められています。請負会社が次のような管理を自分で行っていなければ、労働者派遣事業とされます。

一 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
イ (中略)業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
ロ (中略)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
ハ (中略)企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。

出典:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 第2条(昭和61年労働省告示第37号・厚生労働省)

施工管理に置き換えると、次の三つを請負会社の側が握っているかどうかです。

告示はさらに、請け負った業務を相手から独立して処理していることも求めています。資金を自分で調達し、事業主としての法的責任を負い、単なる労働力の提供ではないことです。施工管理の場合は、機械や材料よりも「自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること」(同条第2号ハ(2))が当てはまりやすいところです。

なお、施工管理の仕事は、派遣そのものが禁止されている「建設業務」ではありません。そのため、正式に派遣の許可を持つ会社が派遣として送り込むことはできます。この点は施工管理の派遣はやめとけ? なれない立場と給料を法律と統計で見るで確かめています。一方で、現場の作業そのもの(建設業務)は派遣が禁止されているので、作業員の偽装請負は、禁止業務への派遣という点でも違法になります(労働者派遣法第4条第1項第2号)。

建設現場では、元請の安全の指示は「義務」

建設現場には、ほかの業種にない事情があります。一つの現場に元請と何社もの下請が入り、元請は現場全体の安全に責任を負っています。労働安全衛生法は、元請(元方事業者)に次のことを求めています。

元方事業者は、関係請負人及び関係請負人に係る作業従事者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない。
2 元方事業者は、関係請負人又は関係請負人に係る作業従事者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならない。

出典:労働安全衛生法 第29条 第1項・第2項(e-Gov法令検索)

ここでいう「作業従事者」は、「事業を行う者が行う仕事の作業に従事する者」です(同法第15条第1項)。雇われている労働者だけでなく、一人親方やフリーランスのように労働者でない人も含む言葉で、現在の条文はこの形になっています。元請が、下請の社員やフリーランスの施工管理に安全の指導をするのは、法律上の義務です。

足場も同じです。元請は注文者として、下請の人が使う足場を組立てや悪天候の後に点検し、点検者の氏名を記録しなければなりません(労働安全衛生規則第655条)。点検者の決め方と研修の扱いは施工管理者等のための足場点検実務者研修は義務? 法令で確かめるで確かめています。

厚生労働省の疑義応答集も、発注者が請負会社の労働者に行う指示のうち、次のようなものはそれだけで偽装請負とは判断されないとしています。

発注者が、安全衛生上緊急に対処する必要のある事項について、労働者に対して指示を行う場合のもの

出典:「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集 問10(厚生労働省)

同じ疑義応答集は、ほかにも建設現場に当てはまる考え方を示しています。

朝礼や危険予知活動(KY活動)、新規入場者教育も、現場全体の安全のために行われるものです。安全のための参加と、日々の業務の進め方の指示とは、分けて考える必要があります。見るべきなのは、安全以外の日々の業務の進め方まで、元請の社員が直接指示しているかどうかです。

個人で受けた人は、「労働者かどうか」を7つの目安で見る

フリーランスとして直接契約している場合は、昭和60年の労働基準法研究会報告が示した判断基準が、今も行政と裁判の物差しになっています。厚生労働省の参考資料集(令和6年10月時点)が要素を整理しているので、施工管理に当てはめると次のようになります。

判断の要素労働者に近い働き方事業者に近い働き方
仕事の依頼を断れるか
(諾否の自由)
割り当てられた現場や書類の仕事を断れない受ける現場や業務を自分で選べる
進め方を指示されるか
(業務遂行上の指揮監督)
元請の社員から、書類の作り方や打合せの進め方を日々こまかく指示される求められる品質や期限は示されるが、進め方は任されている
時間と場所を管理されるか
(拘束性)
始業・終業を管理され、残業や休日出勤を命じられる現場の作業時間に合わせるが、それは工程や近隣への配慮のため
代わりの人を出せるか
(代替性)
本人が必ず出る前提で、代わりや補助者は認められない自分の判断で補助者を使ったり、代わりの人を手配したりできる
報酬の決まり方
(報酬の労務対償性)
日給・月給で、休めば引かれ、残業すれば増える業務の範囲や成果ごとに決まっている
道具と費用
(事業者性)
パソコン・車・ソフトは建設会社が用意し、報酬も社員と変わらない道具や費用を自分で負担し、報酬も相応に高い
ほかの仕事を受けられるか
(専属性)
時間的にも契約上も、その会社の仕事しかできない同時にほかの会社の仕事も受けている
出典:厚生労働省「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集(令和6年10月時点)」の判断要素をもとに、施工管理に当てはめて当サイト作成。上の4つは「指揮監督下の労働」かどうか、報酬の決まり方とあわせて「使用従属性」と呼ばれる。道具と費用・専属性は、それを補強する要素。

どれか一つで決まるわけではなく、全体を見て判断されます。建設現場で大事なのは、時間が決まっていることの理由です。参考資料集は、指揮監督関係を肯定する事情にならない例として、次を挙げています。

勤務時間は指定され、管理されているが、それが他職種との工程の調整の必要性や、近隣に対する騒音等の配慮の必要性などを理由とするものである場合

出典:労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集(拘束性の有無)(厚生労働省)

現場が朝8時に始まり、夕方に作業を止めるのは、近隣への配慮や職種どうしの段取りのためです。それに合わせて現場にいるだけなら、労働者だという根拠にはなりません。逆に、事務所への出社時刻を決められ、書類作成の残業を命じられているなら、指揮監督の色が濃くなります。

偽装請負と判断されたら、何が起きるか

会社から送り込まれる形で偽装請負と判断されると、実際に指揮命令していた会社は、その人に直接雇用を申し込んだものとみなされることがあります。

この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

出典:労働者派遣法 第40条の6 第1項第5号(e-Gov法令検索)

これに当たると、指揮命令していた会社は、その時点の労働条件と同じ条件で労働契約の申込みをしたものとみなされます。働いていた人が承諾すれば、その会社との労働契約が成り立ちます。ただし条文は「適用を免れる目的」を要件にしているうえ、違反に当たると知らず、知らなかったことに過失もない場合は除かれます(同条第1項ただし書)。

罰則もあります。許可を受けずに労働者派遣事業を行った者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(労働者派遣法第59条第2号)。労働者供給事業を行ったり、供給された労働者を自分の指揮命令の下で働かせたりすることも禁じられていて(職業安定法第44条)、違反は同じく1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法第64条第10号)。2025年6月の刑法改正で懲役は拘禁刑に一本化されたので、古い解説にある「懲役」は今の条文では「拘禁刑」です。

個人で受けた形で労働者だと判断された場合は、労働基準法がそのまま適用されます。時間外労働には割増賃金が払われ、時間外労働の上限規制もかかります。割増賃金の額は残業代の計算ツールで出せます。施工管理の残業の上限については施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見るで確かめています。

業務委託で施工管理を受ける前に確かめること

業務委託の自由さと、雇用の守りは、どちらかを取ればもう一方は手放すものです。実態が雇用に近いのに業務委託の形で働いているなら、最初から雇用で働ける会社を探すのも一つの道です。建設業界専門の転職エージェントの面談では、正社員や派遣を含めて、今の経験が生きる働き方を聞くことができます。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談

この記事の数字と判断について

参考にした資料