「施工管理は離職率が高い」という話と、「建設業の離職率は低い」という話の両方を目にします。どちらも数字を挙げていますが、見ている統計が違うことがほとんどです。
この記事では、厚生労働省の雇用動向調査と新規学卒就職者の離職状況を使って、建設業で辞める人が何歳で、勤めて何年目で辞め、辞めた後にどこで働いているのかを確かめます。最後に、会社ごとの離職者数を応募する側が確かめる方法も整理します。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 施工管理の離職率 | 国の統計に、施工管理という職種だけの離職率はない |
| 建設業全体 | 2025年の離職率は8.7%で、全体の13.7%より低い。2007年から19年続けて全体を下回っている |
| 年代 | 29歳以下の離職率は全体の6割ほど。65歳以上だけは率が高く、辞めた人の2割を占める |
| 新卒 | 高卒で建設業に入った人の3年以内の離職率は、20年続けて全体より高い(令和4年3月卒で41.4%)。大卒は全体より低い |
| 辞めた後 | 建設業から転職した人の37.3%は、転職先も建設業 |
| 会社ごとの数字 | 新卒の募集に応募するときは、法律に基づいて会社に情報を求められる。ただし離職者数が出てくるとは限らない |
「施工管理の離職率」は、国の統計にはない
先に断っておくと、施工管理という職種だけの離職率を出している国の統計はありません。離職率を産業ごとに出している雇用動向調査は、辞めた人の職業を「専門的・技術的職業従事者」のような大きな区分でしか集計していません。施工管理の人は、建設業の数字の中に、現場の職人や事務の人と一緒に入っています。
1級や2級の施工管理技士に限った離職率も、当サイトが確かめた範囲では、国の統計にはありませんでした。この記事では建設業の数字を使い、年齢や学歴で分けられるところは分けて示します。
雇用動向調査の離職率は、1年間に辞めた人の数を、1月1日時点で働いていた人の数で割ったものです。定年や契約期間の満了で辞めた人も含みます。
建設業の離職率は、2007年から全体より低い
パートタイムの人も含めた常用労働者の離職率を、長い期間で並べました。
| 年 | 建設業 | 調査産業計 |
|---|---|---|
| 1991年 | 15.1% | 15.2% |
| 1995年 | 15.7% | 14.3% |
| 2000年 | 16.6% | 16.0% |
| 2005年 | 15.2% | 17.5% |
| 2010年 | 11.4% | 14.5% |
| 2015年 | 9.4% | 15.0% |
| 2020年 | 9.5% | 14.2% |
| 2025年 | 8.7% | 13.7% |
1990年代の建設業の離職率は、全体とほとんど同じか、年によっては上回っていました。2000年代に入ると全体より低い年が増え、2007年以降は2025年まで19年続けて全体を下回っています。2025年は8.7%で、全体の13.7%の6割ほどでした。
パートタイムの人を除いた一般労働者に絞っても、2025年の離職率は建設業が7.9%、全体が11.4%で、同じように建設業の方が低くなっています。労働時間の数字と並べた比較は施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで見ています。
29歳以下の離職率は、全体の6割ほど
平均が低くても、若い人だけは辞めやすいのかもしれません。雇用動向調査の年齢別の離職者数を、同じ調査の6月末の労働者数で割り、一般労働者の年代別の離職率の目安を出しました。
| 年齢 | 建設業 | 調査産業計 | 辞めた人の年齢の内訳(建設業/調査産業計) |
|---|---|---|---|
| 29歳以下 | 9.5% | 16.3% | 21.9%/26.5% |
| 30代 | 9.5% | 11.4% | 20.5%/20.3% |
| 40代 | 4.6% | 7.9% | 12.1%/16.8% |
| 50代 | 5.0% | 7.3% | 16.1%/16.4% |
| 60〜64歳 | 7.7% | 17.8% | 7.9%/11.8% |
| 65歳以上 | 14.2% | 19.3% | 21.5%/8.2% |
29歳以下の離職率は、建設業が9.5%で、全体の16.3%の6割ほどです。どの年代でも建設業の方が低く、差が一番小さいのは30代でした。
一つ目立つのは65歳以上です。建設業では、1年間に辞めた一般労働者の21.5%が65歳以上で、全体の8.2%を大きく上回ります。建設業は働く人の中で65歳以上の割合が高く、この年代は定年の後の再雇用など期間を決めた契約で働く人が多いと考えられます。実際、建設業で辞めた65歳以上の一般労働者のうち、30.6%は理由が「契約期間の満了」でした。
辞めた人の4割近くは、勤続10年以上
勤めて何年で辞めたのかも、建設業と全体で形が違います。
| 辞めたときの勤続期間 | 建設業 | 調査産業計 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 15.6% | 21.0% |
| 1〜2年未満 | 15.0% | 13.2% |
| 2〜5年未満 | 19.5% | 21.9% |
| 5〜10年未満 | 12.3% | 17.1% |
| 10年以上 | 37.6% | 26.8% |
建設業で辞めた人のうち、勤続10年以上の人は37.6%で、全体の26.8%より10ポイントほど多くなっています。入って1年未満で辞めた人は15.6%で、全体の21.0%より少ない。定年や契約期間の満了を迎えた年配の人が多く含まれていることは、前の節の年代の数字とも合っています。
ただし、1〜2年未満で辞めた人だけは、建設業の方が少し多くなっています。入ってすぐに辞める人は少ない一方で、2年目に辞める人は全体より少し多い、という形です。
辞めた理由の区分は、「個人的理由」が建設業で73.6%、全体で73.2%と、ほとんど同じでした。この調査の理由の区分は、定年や契約期間の満了、会社の都合などを分けるためのもので、「人間関係」や「労働時間」といった中身までは分かりません。
新卒は別の形:高卒の3年以内離職率は、20年続けて全体より高い
ここまでの数字だけを見ると、建設業は辞める人が少ない産業です。ところが、学校を出てすぐに就職した人に絞ると、学歴で結果が分かれます。
| 卒業した年 | 高卒・建設業 | 高卒・調査産業計 | 大卒・建設業 | 大卒・調査産業計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成15年3月 | 57.4% | 49.3% | 37.9% | 35.8% |
| 平成20年3月 | 43.4% | 37.6% | 29.2% | 30.0% |
| 平成25年3月 | 48.3% | 40.9% | 30.4% | 31.9% |
| 平成30年3月 | 42.7% | 36.9% | 28.0% | 31.2% |
| 令和4年3月 | 41.4% | 37.9% | 30.5% | 33.8% |
高卒で建設業に就職した人の3年以内の離職率は、平成15年3月卒の57.4%から、令和4年3月卒の41.4%まで下がってきました。それでも、平成15年3月卒から令和4年3月卒までの20年分すべてで、全体を上回っています。
大卒は反対で、平成16年3月卒から令和4年3月卒までの19年分、建設業の方が全体より低くなっています。令和4年3月卒では、建設業が30.5%、全体が33.8%でした。
令和4年3月卒の高卒について、何年目までに辞めたかを分けました。建設業は1年目までに18.9%(全体17.7%)、2年目までに32.4%(全体29.3%)、3年目までに41.4%(全体37.9%)です。1年目の差は1.2ポイントですが、2年目、3年目と進むにつれて差が広がっています。令和5年3月卒と令和6年3月卒は、まだ3年たっていません。1年目までの離職率を見ると、高卒の建設業はそれぞれ18.9%、18.1%で、全体の17.3%、16.6%を上回る形は変わっていません。
この数字には、施工管理の他に、現場で作業をする職人として入った人も含まれます。高卒と大卒でどの職種に就いたかの内訳はこの統計からは分からないため、「高卒の施工管理は辞めやすい」とまでは言えません。これから施工管理を目指す人の入り方は、未経験から施工管理になれる? 資格なし・文系から技士への道でまとめています。
建設業を辞めて転職した人の4割近くは、また建設業へ
辞めた人がその後どこで働いているかは、雇用動向調査の転職入職者の集計で分かります。2025年に転職して新しい勤め先に入った人のうち、前の勤め先が建設業だった人は約21万4千人でした。移った先の産業は次の通りです。
| 転職先の産業 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 建設業 | 8万人 | 37.3% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 4万900人 | 19.1% |
| 卸売業,小売業 | 2万4,100人 | 11.3% |
| 製造業 | 1万5,300人 | 7.1% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 1万3,800人 | 6.4% |
| その他の産業 | 4万100人 | 18.7% |
建設業から転職した人の37.3%は、転職先も建設業でした。建設業を辞めた人の多くは、建設業そのものを離れたのではなく、建設業の中で会社を変えています。
2番目に多い「サービス業(他に分類されないもの)」は、労働者派遣業、警備業、建物サービス業、廃棄物処理業などを含む区分です。「学術研究,専門・技術サービス業」には、建築設計や測量の会社が入ります。どちらも、この統計からは細かい行き先までは分かりません。
年代で分けると、20代で建設業から転職した人のうち、転職先も建設業だったのは28.0%でした。30代では39.4%、55歳以上では42.6%です。若い人ほど、建設業の外に出る割合が高くなっています。
建設業の中で会社を変える道と外に出る道は、施工管理からの転職先は? 同業・発注者側・異業種の3つの道で、辞める前に確かめておくことは施工管理を辞めたいときは? 辞める前に確かめる5つのことで整理しています。
会社ごとの離職者数は、新卒の募集なら聞ける
産業の平均がどうであっても、辞める人の多さは会社によって違います。新卒として応募する場合は、法律に基づいて会社に情報を求めることができます。青少年の雇用の促進等に関する法律は、学校を卒業する見込みの人などを対象にした募集について、次のように定めています。
労働者の募集を行う者及び募集受託者は、学校卒業見込者等募集に当たり、当該学校卒業見込者等募集に応じ、又は応じようとする学校卒業見込者等の求めに応じ、青少年雇用情報を提供しなければならない。
出典:青少年の雇用の促進等に関する法律 第13条 第2項(e-Gov法令検索)
ここでいう「青少年雇用情報」には、施行規則で、採用と離職の状況、研修などの取り組み、職場への定着の取り組みの3つの分野が定められています。1つ目の分野の最初の項目が、次のものです。
直近の三事業年度に採用した者(新たに学校若しくは専修学校を卒業した者若しくは新たに公共職業能力開発施設若しくは職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を修了した者又はこれに準ずる者(以下「新規学卒者等」という。)に限る。)の数及び当該採用した者のうち直近の三事業年度に離職した者の数
出典:青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則 第3条 第1項 第1号イ(e-Gov法令検索)
ただし、求められたときに会社が出さなければならないのは、3つの分野それぞれについて1つ以上の項目です(施行規則第4条第3項)。採用と離職の分野では、離職者数の代わりに、男女別の採用者数や平均勤続年数を出すこともできます。求めても離職者数が出てくるとは限らないので、出てこなかったときは面接などで改めて聞くことになります。
3つ目の分野には、残業時間の月平均、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得状況などが並んでいます。離職者数と合わせて見ると、その会社で人が辞める理由の見当がつきやすくなります。
中途で応募する場合、この制度は使えません。常時雇用する労働者が300人を超える会社は、正社員の採用に占める中途採用の割合を公表することが義務になっているので、大手に応募するときの手がかりにはなります。詳しくはゼネコンの施工管理とは? 大手と中小の違いを法律と統計で見るで扱っています。
中途で応募する会社の離職の状況は、建設業界専門の転職エージェントの面談で尋ねる方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談![]()
数字を読むときに気をつけること
- 雇用動向調査と新規学卒就職者の離職状況の建設業には、施工管理の他に、職人や事務の人も含まれます。施工管理だけの数字ではありません。
- 雇用動向調査は、常用労働者5人以上の事業所から無作為に選んだ約1万5,000事業所の調査です。建設業の年代別などの細かい数字は、年によって振れることがあります。
- 年代別の離職率、勤続期間と転職先の内訳は当サイトの計算です。年代別の離職率は6月末の労働者数で割った目安で、公表されている離職率とは計算のもとになる人数が違います。
- 新規学卒就職者の離職状況は、雇用保険の加入記録をもとにした集計で、学歴は生年月日から推定されています。就職した事業所を離れた人は、離職後の状態に関わらず離職者に数えられるため、同じ産業の別の会社に移った人も含みます。
参考にした資料
- 令和7年 雇用動向調査結果の概要|厚生労働省
- 雇用動向調査 令和7年 年計 結果表(第3表・第10-1表・第33表・第34-1表)|政府統計の総合窓口(e-Stat)
- 雇用動向調査 年次別推移(第2表 産業(大分類)別入職・離職率)|政府統計の総合窓口(e-Stat)
- 新規学卒者の離職状況|厚生労働省
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
- 青少年の雇用の促進等に関する法律(第13条)|e-Gov法令検索
- 青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(第3条・第4条)|e-Gov法令検索
