施工管理と現場監督は、多くの場合同じ仕事を指す呼び名です。どちらも法律で定められた言葉ではなく、国の統計でも同じ職種に分類されています。

ややこしいのは、建設の現場には似た名前の役割がいくつもあることです。主任技術者、現場代理人、監督員、工事監理者。この記事では、それぞれがどの法律や契約に書かれていて、どの会社の人が担うのかを条文で確かめます。

施工管理と現場監督は、同じ仕事の別の呼び名

建設業法の条文を全て検索すると、「現場監督」という言葉は一度も出てきません。「施工管理」も同じで、法律の本文には出てこない言葉です。

国の統計も、二つを分けていません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、職種の代表例として次のように並べています。

職種含まれる代表例(抜粋)
建築技術者建築施工管理技術者、建築現場監督、建築士、建設設計技術者
土木技術者土木施工管理技術者、土木現場監督、建設技術士、道路技術者
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査の新職種区分案 職種一覧」から作成。

「建築施工管理技術者」と「建築現場監督」は、どちらも建築技術者に含まれます。統計の上では、二つは同じ職種です。

解説記事の中には、現場監督は現場での指揮、施工管理は事務所の書類仕事まで含む、と呼び分けるものもあります。ただ、この呼び分けに法律や統計の裏付けはありません。求人票でどちらの言葉が使われているかは、会社の習慣による部分が大きいと考えてください。

「施工管理」が法令に出てくるのは、技術検定の種目名

「施工管理」という言葉が法令に出てくるのは、国家資格である技術検定の種目の名前としてです。建設業法施行令第37条は、建築施工管理の検定で問う技術を次のように定めています。

建築一式工事の実施に当たり、その施工計画及び施工図の作成並びに当該工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理を適確に行うために必要な技術

出典:建設業法施行令 第37条 第1項(表の「建築施工管理」の欄・e-Gov法令検索)

同じ条文によると、1級は監理技術者として、2級は主任技術者として必要な知識と能力を判定する検定です。第二次検定に合格すると「1級建築施工管理技士」のように、級と種目の名前を冠した「技士」を名乗れます(同施行令第40条)。

つまり「施工管理」は、仕事の中身を表す言葉で、資格の名前にもなっています。一方の「現場監督」は、資格の名前にも役職の名前にも使われていません。

法律上の役職は「主任技術者」と「監理技術者」

現場監督や施工管理と呼ばれる人が、法律の上で何にあたるのか。建設業法が工事現場に置くよう定めているのは、主任技術者と監理技術者です。

建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

出典:建設業法 第26条 第1項(e-Gov法令検索)

元請の会社が一定の金額以上を下請に出す工事では、主任技術者に代えて監理技術者を置きます(同条第2項)。二つの役職の職務は、施工計画の作成、工程管理、品質管理などの技術上の管理と、現場で働く人への技術上の指導監督です(同法第26条の4)。

求人票の「現場監督」「施工管理」は、この役職に就く人か、その人を補佐する人を指していることがほとんどです。職務の詳しい中身は、施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理にまとめました。

「現場代理人」は、契約の上で会社の代わりを務める人

もう一つ、施工会社の側に置かれるのが現場代理人です。主任技術者が技術の面の責任者なのに対して、現場代理人は契約の面で会社を代表します。

建設業法第19条の2は、請負人が現場代理人を置くときは、その権限などを書面で注文者に通知するよう定めています。どんな権限を持つかは、請負契約の中で決まります。国や自治体の工事で使われる公共工事標準請負契約約款には、次のように書かれています。

現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第十二条第一項の請求の受理、同条第三項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる。

出典:公共工事標準請負契約約款 第10条 第2項(中央建設業審議会・国土交通省)

お金と契約の解除に関わる権限を除けば、現場のことは現場代理人が会社に代わって決められる、という定めです。同じ条の第5項は、現場代理人と主任技術者・監理技術者を「兼ねることができる」としています。一人の施工管理が、技術の責任者と契約上の代理人を兼ねることもできます。

「監督員」は発注者の側の人

名前が「現場監督」に似ていて紛らわしいのが、監督員です。監督員は施工会社の人ではなく、工事を発注した側が置く人です。建設業法第19条の2第2項も、注文者が監督員を置くときは、その権限を請負人に書面で通知するよう定めています。

公共工事標準請負契約約款が定める監督員の権限は、次の通りです(設計図書に定めるところによる権限の抜粋)。

一 この契約の履行についての受注者又は受注者の現場代理人に対する指示、承諾又は協議
二 設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成及び交付又は受注者が作成した詳細図等の承諾
三 設計図書に基づく工程の管理、立会い、工事の施工状況の検査又は工事材料の試験若しくは検査(確認を含む。)

出典:公共工事標準請負契約約款 第9条 第2項(第1号〜第3号・中央建設業審議会・国土交通省)

監督員は発注者の立場で、施工会社の現場代理人に指示を出し、工事を検査します。公共工事の現場で「監督さん」と言ったとき、発注者の監督員を指すのか、施工会社の現場監督を指すのかは、立場が正反対になるので注意が必要です。

「工事監理」は建築士の仕事で、施工管理とは別

建物の工事では、もう一つ「工事監理」という言葉が出てきます。読みは施工管理の「管理」と同じ「かんり」ですが、中身は別の仕事です。建築士法は、工事監理を次のように定義しています。

この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

出典:建築士法 第2条 第8項(e-Gov法令検索)

建築基準法第5条の6第4項は、建築主に対して、建築士である工事監理者を定めるよう義務づけています(一定の建築物の工事の場合)。工事監理者は建築主が定める人で、設計事務所の建築士が務めることが多い立場です。

施工管理は、施工会社が工事を計画通りに進めるための管理です。工事監理は、その工事が設計図書の通りにできているかを、建築主が定めた建築士が確かめる仕事です。同じ現場にいても、確かめる側と確かめられる側に分かれます。

呼び名と役職の違いを一覧で確かめる

ここまでの六つの呼び名を、誰が担うのかと、何に書かれているのかで整理します。

呼び名担う人書かれているところ役割
現場監督施工会社法令に定めなし(通称)現場で工事を管理する人の呼び名
施工管理施工会社法令では技術検定の種目名職種の名前。現場監督と同じ仕事を指すことが多い
主任技術者・監理技術者施工会社建設業法 第26条工事現場の技術上の管理と指導監督
現場代理人施工会社建設業法 第19条の2、請負契約契約の上で会社に代わって現場を運営する
監督員発注者建設業法 第19条の2、請負契約施工会社への指示・承諾、工事の検査
工事監理者建築主が定める建築士建築士法 第2条、建築基準法 第5条の6工事が設計図書の通りかを確認する
※現場代理人・監督員の権限は、請負契約ごとに定められます。表は公共工事標準請負契約約款の場合です。

施工会社の側にいるのは、上の四つです。現場監督と施工管理は呼び名、主任技術者・監理技術者と現場代理人は法律や契約で決まった役割、という関係になります。

求人票では、呼び名より中身を見る

「現場監督」の求人と「施工管理」の求人を、呼び名だけで比べる意味はあまりありません。仕事の違いは、次のようなところに出ます。

施工管理の年収や働き方の統計は、同じ職種に分類される現場監督にもそのまま当てはまります。年収は施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で、労働時間と離職率は施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで確かめています。

参考にした資料