「施工管理は給料が高い」と言われる理由として、「残業が多いから」「責任が重いから」「人手不足だから」といった説明がよく挙げられます。ただ、どれがどれくらい給料に表れているのかを、数字で確かめた記事は多くありません。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)を使い、施工管理に近い職種の年収の目安を、基本給などの所定内給与、残業代、賞与の3つに分けて、全産業の平均と比べます。年代別にも分けて、差の中身がどう変わるかを見ます。

確かめたこと分かったこと
本当に高いか建築技術者の所定内給与は、統計の145職種のうち17位
差の中身全産業との年収の差約133万円のうち、6割が所定内給与、2割強が賞与。残業代は17%
時間あたり所定内給与を時間あたりにしても、全産業より17%高い
年代による違い20代後半〜30代前半は差の4割前後が残業代。40代後半からは残業代の差は小さい
説明にならないもの平均年齢や勤続年数は全産業とほぼ同じ。1,000人以上の会社で働く人の割合は全産業より低く、10〜99人の会社どうしで比べても所定内給与は1.22倍
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとに当サイト作成。

施工管理の給料は、全職種の中でも上位にある

国の統計には「施工管理」という職種がありません。賃金構造基本統計調査では、建築施工管理技術者は「建築技術者」に、土木施工管理技術者は「土木技術者」に含まれます。建築技術者には建築士や設計の技術者も入っています。職種の分け方は施工管理の年収は? 賃金統計で見る年代別・会社規模別の目安で説明しています。

令和7年の調査で、従業員10人以上の企業で働く一般労働者(パートなどの短時間労働者を除く)の数字を並べると、次のようになります。

項目建築技術者土木技術者産業計
平均年齢43.4歳46.0歳44.4歳
勤続年数12.9年13.4年12.7年
所定内実労働時間(月)166時間162時間162時間
超過実労働時間(月)17時間12時間11時間
所定内給与(月)40万7,500円38万4,100円34万600円
残業代など(月)4万8,700円3万3,800円2万9,900円
年間賞与131万6,100円123万4,700円100万9,600円
年収の目安約679万円約625万円約546万円
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種(小分類)第1表、産業大分類 第1表(企業規模10人以上)。残業代などは「きまって支給する現金給与額」から「所定内給与額」を引いた額、年収の目安は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で当サイト計算。

この調査の職種は145あります。建築技術者の所定内給与はその中で17位、年収の目安では20位でした。土木技術者は所定内給与が28位、年収の目安が30位です。建築技術者より上にあるのは、航空機操縦士、医師、大学教授、管理的職業従事者、公認会計士・税理士、システムコンサルタントなどで、施工管理はそれに続く位置にあります。

ここでいう所定内給与は、毎月決まって払われる給与のうち、残業代などを除いた額です。基本給の他、職務手当、通勤手当、家族手当などが入ります。残業代などは、時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当などで、厚生労働省は「超過労働給与額」と呼んでいます。

全産業との差の6割は所定内給与。残業代は2割に届かない

年収の目安の差を、所定内給与(12か月分)、残業代など(12か月分)、賞与の3つに分けると、次のようになります。

産業計との差建築技術者土木技術者
年収の目安の差約133.5万円約79.4万円
うち所定内給与約80.3万円(60.1%)約52.2万円(65.8%)
うち残業代など約22.6万円(16.9%)約4.7万円(5.9%)
うち賞与約30.7万円(23.0%)約22.5万円(28.4%)
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」から当サイト計算。所定内給与と残業代などは月額の差を12倍した額です。

「残業が多いから給料が高い」という説明は、平均で見ると一部しか当たっていません。建築技術者でも、差の中で残業代が占めるのは16.9%で、一番大きいのは所定内給与の60.1%でした。土木技術者では、残業時間が産業計とほぼ同じで、残業代の差は5.9%にとどまります。

時間あたりで見ても、同じことが言えます。所定内給与を所定内実労働時間で割ると、建築技術者は1時間あたり約2,455円、土木技術者は約2,371円、産業計は約2,102円です。建築技術者は産業計より16.8%、土木技術者は12.8%高く、長く働いているから高いのではなく、決まった時間の中で払われる給与自体が高いことが分かります。

20代後半〜30代前半は、差の4割前後が残業代

平均では残業代の割合は小さくても、年代で分けると形が変わります。建築技術者と産業計を、同じ年代どうしで比べました。

年齢超過実労働時間(建築技術者/産業計)所定内給与(産業計=100)年収の目安の差差に占める残業代などの割合
20〜24歳20時間/11時間108.5約50.1万円41%
25〜29歳28時間/14時間111.6約102.8万円43%
30〜34歳28時間/13時間116.6約129.0万円37%
35〜39歳20時間/13時間116.5約153.4万円22%
40〜44歳18時間/12時間120.5約152.8万円18%
45〜49歳13時間/11時間120.4約151.3万円7%
50〜54歳11時間/10時間124.8約174.6万円4%
55〜59歳10時間/9時間137.0約238.3万円3%
60〜64歳8時間/8時間144.8約236.9万円3%
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種(小分類)第5表、産業計 第1表(企業規模10人以上)から当サイト計算。

25〜29歳と30〜34歳の建築技術者は、超過実労働時間が月28時間で、同じ年代の産業計の2倍ほどです。この年代では、産業計との年収の差の4割前後が残業代から来ています。若い施工管理の給料が高く見える理由の一つは、実際に長く働いていることです。

40代後半になると、残業時間の差は小さくなり、差の中身は所定内給与と賞与が中心になります。所定内給与の差はおおむね年代が上がるほど開き、55〜59歳では産業計の1.37倍です。

2024年4月から建設業にも残業の上限規制が適用され、現場の残業は減ってきています。若い年代の残業代の分は、今後小さくなる可能性があります。残業の変化は施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見るで見ています。

年齢や勤続年数、大企業の多さでは説明できない

給料の差は、働く人の顔ぶれの違いから生まれることもあります。年齢が高い人や、勤続年数の長い人、大企業で働く人が多い職種は、平均が高くなりやすいからです。

ところが、建築技術者の平均年齢は43.4歳で産業計の44.4歳より若く、勤続年数は12.9年と産業計の12.7年とほぼ同じです。同じ年代どうしで比べても、上の表の通り、どの年代でも所定内給与は産業計を上回っています。

会社の規模も、理由にはなりません。従業員1,000人以上の会社で働く人の割合は、建築技術者で25.2%、土木技術者で18.9%で、産業計の34.5%より低くなっています。規模をそろえて所定内給与を比べると、10〜99人の会社で建築技術者は月37万4,200円、産業計は30万5,600円で、1.22倍でした。大企業が多いから平均が高いのではなく、小さな会社でも給与水準が高いことが分かります。会社の規模ごとの年収の差は、ゼネコンの施工管理とは? 大手と中小の違いを法律と統計で見るでも扱っています。

統計の外にある背景:人手不足と、資格が要る立場

賃金構造基本統計調査からは、給与が高い原因までは分かりません。ここからは、関係がありそうな国の数字を並べます。

一つは人手不足です。厚生労働省の一般職業紹介状況では、令和8年7月の「建築・土木・測量技術者」の有効求人倍率は5.46倍で、職業計の1.05倍を大きく上回っていました。仕事を探す人1人に対して5件以上の求人がある状態では、会社は給与を上げないと人を集めにくいと考えられます。

もう一つは、資格が要る立場があることです。建設業法は、工事現場ごとに主任技術者か監理技術者を置くよう求めています。土木・建築などの指定建設業で、下請に大きく出す工事の監理技術者になれるのは、1級の施工管理技士などの資格を持つ人です。こうした人がいなければ、会社はその規模の工事を請け負えません。

ただし、資格手当そのものは大きくありません。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査で、技能手当や技術(資格)手当を支給した建設業の企業は77.6%と多い一方、支給された人の1人平均は月1万5,200円で、調査産業計の2万1,500円より低くなっています。資格は手当の額より、就ける立場や会社の評価を通じて給与に表れると考えられます。詳しくは施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで確かめています。

求人票の給料を見るときに確かめること

平均で見た給料の高さが、自分に当てはまるとは限りません。求人票では、給料の中身を次の点で確かめてください。

応募する前に確かめておきたい場合は、建設業界専門の転職エージェントの面談で、応募先ごとの給料の中身を尋ねる方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談

残業時間と離職率の統計は施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで、給料と残業の少なさのどちらを選ぶかは施工管理は「意外と楽」? 残業が少ない会社の条件を国の調査で見るで見ています。

数字を読むときに気をつけること

参考にした資料