電気の施工管理は、建物や工場、発電設備などの電気工事で、工程・品質・安全を管理する仕事です。他の施工管理と違うのは、現場で配線をする人に「電気工事士」という別の国家資格が要ることです。施工管理技士と電気工事士は、名前は似ていても、法律上の役割が全く違います。

この記事では、建設業法で電気工事がどう定義されているかを確かめたうえで、電気工事士法と電気工事業法から、電気工事士と施工管理の役割の違いを整理します。電気工事の会社に置かなければならない人、1級が要る場面、電気工事士の免状が技術検定の受検にどう関わるかも、法令と受検の手引で見ます。

確かめたこと分かったこと
電気工事の範囲発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備などを設置する工事。照明や非常用電気設備、太陽光発電設備の設置もここに入る
電気工事士との違い配線などの作業に従事できるのは電気工事士だけ。施工管理技士の資格だけでは、その作業はできない
会社に置く人建設業法の主任技術者・営業所技術者に加えて、電気工事業法の主任電気工事士を営業所ごとに置く。第一種電気工事士は、営業所技術者の要件も満たせる
1級が要る場面電気工事業は指定建設業の一つ。元請として下請に5,000万円以上出す工事の監理技術者には、1級電気工事施工管理技士などの資格が要る
受検への近道電気工事士か電気主任技術者なら、実務経験1年で2級の第二次検定を受けられる
業界の数字電気工事業の許可業者は2000年から23.8%増えた。建築工事業は37.8%、土木工事業は22.1%減っている
出典:建設業法・同施行令・同施行規則、電気工事士法・同施行規則、電気工事業の業務の適正化に関する法律、建設業振興基金「令和8年度 電気工事施工管理技術検定 新受検資格 受検の手引」、国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」をもとに当サイト作成。

電気の施工管理が受け持つのは、発電から構内の配線まで

建設業法は、建設工事を29の種類に分けています(別表第一)。そのうち「電気工事」の中身を、国土交通省は告示で次のように定めています。

建設工事の内容例示
発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事
出典:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」(建設工事の内容は昭和47年建設省告示第350号)。

ビルや工場の受変電設備、幹線や照明の配線、発電所や送電線、鉄道の架線まで、電気の工事は幅広い分野にまたがります。同じ資料は、太陽光発電設備の設置工事も電気工事に当たるとしています。

工場やプラントの中の機械器具は、電気工事と重なることがあります。その場合は原則として電気工事の側に区分され、どれにも当てはまらない機械器具や複合的な機械器具の設置が機械器具設置工事になります。プラント側から見た区分はプラント施工管理とは? 仕事内容と工期を決める検査を法律で整理で整理しました。

一方で、名前が似ていても別の業種になる工事があります。電話やネットワーク、放送の設備は「電気通信工事」、火災報知設備などは「消防施設工事」です。電気の施工管理と電気通信の施工管理は、許可の業種も技術検定の種目も分かれています。

工程・品質・原価・安全を管理するという仕事の骨組みは、他の施工管理と変わりません。4大管理の中身や1日の流れは、施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理で整理しています。

電気工事士は作業をする人、施工管理は管理をする人

電気の施工管理が、他の施工管理とはっきり違うのはここです。電気工事の作業そのものに、法律で資格が決められています。

第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。

出典:電気工事士法 第3条 第1項(e-Gov法令検索)

同じ条の第2項は、住宅や小さな店舗などの「一般用電気工作物等」の電気工事の作業を、第一種か第二種の電気工事士に限っています。「自家用電気工作物」は、最大電力500キロワット未満の需要設備など、高い電圧で電気を受けるビルや工場の設備を指します(同法第2条第2項)。発電所や変電所、500キロワット以上の需要設備は、この自家用電気工作物から除かれています。

資格が要る「作業」の中身は、電気工事士法施行規則が具体的に挙げています。電線どうしをつなぐ、電線管に電線を収める、配線器具を取り付けて電線をつなぐ、配電盤を取り付ける、といった作業です(第2条)。電気工事士の作業を補助することは、資格がなくてもできます。

資格根拠の法律できること
第一種電気工事士電気工事士法自家用電気工作物(500kW未満の需要設備など)と一般用電気工作物等の電気工事の作業
第二種電気工事士電気工事士法一般用電気工作物等(住宅・小規模な店舗など)の電気工事の作業
1級・2級電気工事施工管理技士建設業法電気工事の主任技術者・営業所技術者になる(1級は監理技術者にもなれる)。作業の資格ではない
出典:電気工事士法第2条・第3条、建設業法第7条・第26条、建設業法施行規則第7条の3をもとに当サイト作成。

施工管理技士の資格は、現場の技術上の管理をする立場に就くためのものです。施工管理技士の資格だけを持つ人は、配線などの作業に自分で従事することはできません。逆に、電気工事士は作業ができますが、それだけで現場全体の工程や安全を管理する立場に就くわけではありません。実際の電気の施工管理では、両方の資格を持っている人も多くいます。

電気工事の会社は、二つの法律で人を置く

電気工事を請け負う会社は、建設業法と、電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)の両方の決まりを受けます。置かなければならない人は、次の三つです。

置く人根拠どこになれる人(電気工事業の場合)
主任技術者建設業法第26条工事現場ごと1級・2級電気工事施工管理技士(第二次検定合格)、第一種電気工事士、免状交付後3年以上の実務経験がある第二種電気工事士、免状交付後5年以上の実務経験がある電気主任技術者、10年以上の実務経験がある人など
営業所技術者建設業法第7条許可を受けた営業所ごと
主任電気工事士電気工事業法第19条一般用電気工事の業務を行う営業所ごと第一種電気工事士か、免状交付後3年以上の実務経験がある第二種電気工事士
出典:建設業法第7条・第26条、建設業法施行規則第7条の3、電気工事業の業務の適正化に関する法律第19条をもとに当サイト作成。主任技術者と営業所技術者の要件は、建設業法第7条第2号で共通です。

電気工事業では、第一種電気工事士の免状を持っていれば、それだけで主任技術者や営業所技術者の要件を満たせます。電気工事士の資格が、作業の資格であると同時に、施工管理の立場に就く資格にもなっている点が、他の業種と違うところです。

同じ指定建設業でも、管工事業は主任技術者の入口がさらに広く、建築設備士や給水装置工事主任技術者の免状に実務経験1年を足しても就けます。ただし監理技術者に就けるのは1級管工事施工管理技士か技術士などに限られます。設備の側の資格のしくみは設備施工管理とは? 管工事の仕事内容と必要な資格を法律で整理で整理しています。

電気工事業を営むには、原則として電気工事業法の登録が必要です(第3条)。ただし、建設業の許可を持つ会社は登録の規定が適用されず、登録を受けた電気工事業者とみなされます。その代わり、電気工事業を始めたときは届け出なければなりません(自家用電気工事だけを行う場合は通知。第34条)。みなされるのは登録の手続きだけで、主任電気工事士を置く決まりは建設業の許可を持つ会社にもかかります。

電気工事業は指定建設業。大きな元請工事では1級が要る

建設業法は、技術の総合性などを考えて、7つの業種を「指定建設業」にしています。土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業です(建設業法施行令第5条の2)。

元請として請け負った工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)になると、主任技術者の代わりに監理技術者を置きます(建設業法第26条第2項・施行令第2条)。指定建設業では、この監理技術者に就けるのは、国土交通大臣が定める試験や免許の合格者などに限られます。電気工事業では、1級電気工事施工管理技士などがこれに当たります。

第一種電気工事士は主任技術者にはなれても、この監理技術者の要件には入っていません。大きな工事の元請を任されるかどうかで、1級電気工事施工管理技士の価値が変わってきます。1級と2級で就ける立場の違いは施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで整理しています。

建築工事業も同じ指定建設業ですが、こちらの監理技術者には1級建築施工管理技士のほかに一級建築士も就けます。建築士の資格がそのまま要件に入る点が、第一種電気工事士では監理技術者になれない電気とは違います。建築の側のしくみは建築施工管理とは? 仕事内容と建築士との違いを法律で整理で整理しています。

電気工事士の免状があると、技術検定を早く受けられる

電気工事施工管理の技術検定は、第一次検定と第二次検定に分かれています。第二次検定を受けるには実務経験が要りますが、電気工事士の免状があると、必要な年数が短くなる区分があります。令和8年度の受検の手引から、新しい受検資格の主な区分を並べます。

検定通常の区分電気工事士などの区分
2級 第二次検定2級の第一次検定に合格した後、実務経験3年以上電気工事士(第一種・第二種)か電気主任技術者の試験合格後または免状交付後、実務経験1年以上。第一次検定と同時に受けられる
1級 第二次検定1級の第一次検定に合格した後、実務経験5年以上(特定実務経験1年以上を含めば3年以上、監理技術者補佐として1年以上)第一種電気工事士の試験合格後、実務経験5年以上(特定実務経験1年以上を含めば3年以上)
出典:建設業振興基金「令和8年度 1級・2級電気工事施工管理技術検定 新受検資格 インターネット専用受検の手引」。区分の一部を当サイトで抜き出したものです。

2級では、電気工事士の免状があれば実務経験1年で第二次検定まで受けられます。通常の区分の3年と比べると、2年早くなります。1級では、必要な年数は通常の区分と同じ5年(または3年)ですが、数え始めが第一種電気工事士の試験に合格した時点になります。第一次検定と第二次検定を同じ年に受けられる区分もあります。特定実務経験とは、請負金額4,500万円以上の工事で、監理技術者や主任技術者の指導の下などで行った施工管理の経験を指します。

受検に数える実務経験は、工事の施工の管理に直接的に関わった経験で、補助者としての経験も含みます。どんな仕事が数えられないかは施工管理アシスタントとは? 事務との違いと実務経験になる条件で手引の書き方を確かめています。

電気工事業の許可業者は、25年あまりで2割以上増えた

国土交通省は毎年、業種ごとに許可を持つ業者の数をまとめています。電気工事業は、建築工事業や土木工事業と逆の動きをしています。

業種2000年3月末2026年3月末増減
電気工事業53,743業者66,534業者+23.8%
建築工事業226,778業者140,967業者−37.8%
土木工事業167,891業者130,833業者−22.1%
出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在)」表-3。1つの業者が複数の業種の許可を持つことがあります。

電気工事業の許可業者は、前の年からも1.6%増えています。この資料からは増えた理由までは分かりませんが、電気工事を請け負う会社の数が、建設業全体の流れとは別に増えていることは確かです。

逆に22.1%減った土木工事業については、発注者の6割超が政府だという事情も含めて土木施工管理とは? 仕事内容と建築との違いを法律と基準で整理で見ています。

人手の足りなさは、厚生労働省の一般職業紹介状況にも出ています。2026年7月の有効求人倍率は、電気工事の作業をする「電気工事従事者」で3.26倍でした。職業計の1.05倍の3倍を超えています。ただし、この分類は電気工事士のような作業をする人の数字で、電気の施工管理だけを取り出した数字ではありません。

電気の施工管理を目指す・移る前に確かめること

電気工事士として作業をしていて施工管理に移りたい人は、未経験から施工管理になれる? 資格なし・文系から技士への道も参考にしてください。電気の施工管理の経験がある人が会社を移るときは、建設業界専門の転職エージェントの面談で、今の資格と経験がどの会社でどう評価されるのかを聞く方法もあります。面談は無料です。ビルドジョブ|建設業界特化の転職エージェントの無料キャリア面談

数字を読むときに気をつけること

参考にした資料