施工管理を辞めたいと思って調べると、「辞めるべき理由」と「続けるべき理由」を挙げた記事がたくさん見つかります。この記事は、辞めるかどうかを決めるための記事ではありません。

辞めると決める前に確かめておかないと、後から取り戻しにくいことがあります。残業の記録、有給休暇の残り、資格の受検に使う実務経験の証明などです。法律と公的な資料で、一つずつ確かめます。

確かめることどこで確かめるか
1. 残業時間の記録自分の出退勤の記録、給与明細
2. 有給休暇の残り給与明細、勤怠システム、人事の担当者
3. 実務経験の証明施工管理技術検定の受検の手引、今の会社
4. 退職を申し出る時期就業規則、雇用契約書
5. 休むという方法加入している健康保険、医療機関

確かめる前に、辞めたい理由を「会社」と「仕事」に分ける

五つを確かめる前に、辞めたい理由を一度書き出しておきます。理由が今の会社にあるのか、施工管理の仕事そのものにあるのかで、次に取る道が変わるからです。

例えば労働時間が理由なら、同じ会社の中でも働く場所で差があります。日建協の時短アンケートによると、2025年11月の所定外労働時間は、現場に出る外勤(建築)が41.0時間、支店や本社で働く内勤(建築)が22.6時間でした。

回答者はゼネコンの職員組合の組合員が中心で、中小の会社の状況はこの数字からは分かりません。それでも、施工管理を辞める前に、現場から内勤へ移れるかを会社に確かめる余地はあります。

労働時間と離職率の統計は施工管理は「やめとけ」「きつい」? 労働時間と離職率を統計で見るで、会社を変える道と建設業の外に出る道は施工管理からの転職先は? 同業・発注者側・異業種の3つの道で確かめています。

1. 残業時間の記録を残す

一つ目は、残業時間の記録です。辞めると決める前から残しておきたいのは、残業の時間が、上限規制と失業給付の両方にかかわるからです。

建設業には、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間です(労働基準法第36条)。特別な事情があっても、時間外労働は年720時間以内に収めます。休日労働を含めると、月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内です。

ただし、災害の復旧・復興の事業では、月100時間未満と平均80時間以内の決まりは適用されません(同法第139条)。

もう一つは、雇用保険の失業給付(基本手当)です。ハローワークは、次のような理由で離職した人を「特定受給資格者」の一つに挙げています。

離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。

出典:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)

特定受給資格者にあたると、基本手当を受けられる日数が、一般の離職者より多くなる場合があります。

離職したときの年齢と、雇用保険に入っていた期間一般の離職者特定受給資格者
30〜34歳・5年以上10年未満90日180日
35〜44歳・10年以上20年未満120日240日
45〜59歳・20年以上150日330日
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」から一部を抜き出して作成。就職困難者の区分は省いています。

また、正当な理由がなく自己の都合で退職した場合は、7日間の待期期間の後に「給付制限」があり、その間は基本手当が支給されません。2025年4月1日以降に退職した場合、給付制限は原則1か月です。

特定受給資格者にあたるかどうかを判断するのは、ハローワークです。自分で決められるものではありません。残業の多い月が続いているなら、出勤と退勤の時刻を、自分の手元にも日ごとに残しておくと、後で確かめる材料になります。

2. 有給休暇が何日残っているか

二つ目は、年次有給休暇の残りです。労働基準法第39条は、雇われてから6か月続けて勤め、全労働日の8割以上出勤した人に、10日の有給休暇を与えるよう定めています。その後は、勤めた年数に応じて増えます。

勤めた期間有給休暇の日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月以上20日
出典:労働基準法 第39条 第1項・第2項から作成。全労働日の8割以上出勤した場合の日数です。

有給休暇は、働く人が請求した時季に与えるのが原則です。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は他の時季に変えられます(同条第5項)。

工期の途中で辞めるなら、引き継ぎの期間と有給休暇の残りを合わせて、退職日を考えることになります。残りの日数は、給与明細や勤怠システム、人事の担当者で確かめられます。

3. 施工管理技士を受けるなら、実務経験の証明を確かめる

三つ目は、施工管理ならではの確認です。これから施工管理技術検定を受けるつもりなら、実務経験を誰に証明してもらうことになるのかを確かめておきます。

建設業振興基金の「2級建築施工管理技術検定 受検の手引」(旧受検資格用・令和8年度)は、実務経験が必要な受検資格で申し込む人に、実務経験証明書を求めています。証明するのは、本人ではなく勤務先です。

記載した実務経験年数・内容等が正しいことを勤務先の代表者に証明いただくものです。証明がない場合は、受検できません。

出典:2級建築施工管理技術検定 受検の手引(旧受検資格用)令和8年度(一般財団法人建設業振興基金)

誰が証明するのかについて、同じ手引は次のように書いています。

注1 以前勤務していた会社等の実務経験も含め、現在の勤務先の代表者等の証明で結構です。
注2 現在失業中の場合は、実務経験証明書に記載した直近の勤務先で証明を受けてください。

出典:2級建築施工管理技術検定 受検の手引(旧受検資格用)令和8年度(一般財団法人建設業振興基金)

次の会社に移ってから申し込むなら、前の会社での経験も含めて、新しい会社の代表者などに証明してもらえます。一方で、辞めた後、次の仕事に就く前に申し込むなら、証明を頼む先は辞めた会社です。この手引の申請受付は、令和8年7月13日から27日まででした。

どちらの場合も、担当した工事の名前、期間、立場を在職中に控えておくと、証明を頼むときに困りません。

手引は、事実と違う実務経験が分かった場合、受検した本人には合格の取り消しなどの処分、会社にも建設業法に基づく処分が行われることがあるとしています。経験の年数を多めに書いてもらう、といった頼み方はできません。

検定の種目や受検資格の区分によって、試験を行う機関と書類は違います。土木や管工事などを受けるなら、その種目の手引で確かめてください。既に合格している資格は本人に付くもので、会社を辞めてもなくなりません。

4. 退職を申し出る時期は、就業規則と民法を両方見る

四つ目は、いつまでに辞めると伝えるかです。期間の定めのない雇用について、民法は次のように定めています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

出典:民法 第627条 第1項(e-Gov法令検索)

一方で、会社の就業規則に「退職の1か月前までに申し出る」といった決まりが書かれていることもあります。まず就業規則で自分の会社の決まりを確かめ、担当している工事の工程と引き継ぎの期間を見て、退職日を決めます。

この条文は、期間の定めのない雇用についてのものです。契約期間が決まっている人は、まず雇用契約書を確かめてください。

5. 体を壊しているなら、辞める前に「休む」も確かめる

五つ目は、体や心の調子を崩している場合です。辞めるかどうかを決める前に、休むという方法があるかを確かめます。

会社の健康保険に入っている人には、健康保険法第99条の傷病手当金があります。

退職した後も、退職日の前日まで続けて1年以上被保険者で、退職したときに傷病手当金を受けていれば、続けて受けられます(同法第104条)。細かい条件は、加入している協会けんぽや健康保険組合に確かめてください。

雇用保険の基本手当は、すぐに働ける状態であることが前提です。ハローワークは、病気やけがですぐに就職できないときは基本手当を受けられないとしています。その代わり、病気やけがで30日以上続けて働けないときは、受給期間を最長3年まで延ばせます。

眠れない、朝に体が動かないといった状態が続いているなら、辞めるかどうかを決めるより先に、医療機関を受診してください。

迷っている間に相談できるところ

会社の中で話しにくい問題なら、厚生労働省の総合労働相談コーナーがあります。各都道府県労働局や全国の労働基準監督署など378か所にあり、予約不要・無料で、面談か電話で相談できます。

対象は、解雇、配置転換、賃金の引き下げ、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、労働問題の全般です。法律に違反している疑いがあれば、労働基準監督署などの担当部署に取り次いでもらえます。

転職するかどうかがまだ決まっていなくても、転職エージェントの面談で、今の資格と経験がどう評価されるのかを聞くことはできます。辞めると決めてから探し始めるより、比べる材料が一つ増えます。

参考にした資料