「施工管理は将来性がある」「AIで仕事がなくなる」。どちらの話も目にしますが、国が施工管理の仕事をどう変えようとしているかまで書いたものは多くありません。
この記事では、建設投資の見通しと就業者数の統計で、仕事の量と人の数を確かめます。そのうえで、国土交通省の「i-Construction 2.0」と、2024年12月に施行された建設業法の改正を読みます。AIやICTで変わるのが施工管理のどの部分なのかを、国の計画と法律の言葉から整理します。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 仕事の量 | 2026年度の建設投資は81兆4,700億円の見通し(名目)。建設から50年を超える道路橋は、2040年3月に約75%になる |
| 人の数 | 建設業の就業者は1997年の685万人から、2025年は478万人。3割減った |
| 国の計画 | 2040年度までに、建設現場で少なくとも3割の省人化を目指す。柱の一つが「施工管理のオートメーション化」 |
| AIに任せるもの | 国の計画は、手作業をAIやシステムで自動化し、人はマネジメント業務に特化する方向を示している |
| 法律の変化 | 2024年12月から、条件を満たせば、専任が必要な工事でも1人の技術者が2つの現場を受け持てる |
仕事の量:建設投資は増えていて、古いインフラも増える
施工管理の仕事があるかどうかは、まず工事の量で決まります。国土交通省は毎年度、国内の建設投資の見通しを出しています。2026年8月に公表された見通しは次の通りです。
| 年度 | 建設投資 | うち政府 | うち民間 |
|---|---|---|---|
| 2023年度(実績) | 71兆8,547億円 | 24兆9,137億円 | 46兆9,410億円 |
| 2024年度(見込み) | 74兆1,700億円 | 25兆3,100億円 | 48兆8,600億円 |
| 2025年度(見込み) | 79兆1,800億円 | 26兆4,500億円 | 52兆7,300億円 |
| 2026年度(見通し) | 81兆4,700億円 | 26兆6,000億円 | 54兆8,700億円 |
2026年度の建設投資は81兆4,700億円で、2025年度より2.9%増える見通しです。ただし、これは名目の金額で、資材や人件費の値上がりも含んでいます。金額が増えた分だけ工事の量が増えたとは限りません。
これから先の工事量に関わるのが、インフラの老朽化です。国土交通省は、高度経済成長期以降に造られた施設について、建設から50年以上たつものの割合を次のように示しています。
| 施設 | 2020年3月 | 2030年3月 | 2040年3月 |
|---|---|---|---|
| 道路橋(約73万橋) | 約30% | 約55% | 約75% |
| トンネル(約1万1千本) | 約22% | 約36% | 約53% |
| 河川管理施設(約4万6千施設) | 約10% | 約23% | 約38% |
| 水道管路(約74万km) | 約8% | 約23% | 約44% |
| 下水道管渠(約48万km) | 約5% | 約16% | 約35% |
| 港湾施設(約6万1千施設) | 約21% | 約43% | 約66% |
国土交通省は、老朽化の状況は建設年度だけで決まるものではなく、ここでは便宜的に建設後50年で整理したと断っています。それでも、点検、補修、更新の工事が今後増えていく方向ははっきりしています。
人の数:建設業の就業者は、ピークから3割減った
仕事の量に対して、働く人は減っています。総務省の労働力調査で、建設業の就業者数を並べました。
| 年 | 建設業の就業者 | 就業者全体 |
|---|---|---|
| 1997年 | 685万人 | 6,557万人 |
| 2002年 | 618万人 | 6,330万人 |
| 2010年 | 504万人 | 6,298万人 |
| 2015年 | 503万人 | 6,402万人 |
| 2020年 | 494万人 | 6,710万人 |
| 2025年 | 478万人 | 6,828万人 |
建設業の就業者は1997年の685万人が一番多く、2025年は478万人でした。この間に3割減っています。就業者全体はこの間に増えているので、建設業だけが人を減らしてきたことになります。
i-Construction 2.0の本文は、建設業では就業者のうち55歳以上の割合が全産業の平均より高い水準で増えている一方、29歳以下の割合の増え方は緩やかだとしています。本文は、今後は年配の人の大量退職も見込まれるとしています。
施工管理に近い職業の求人も多い状態です。厚生労働省の一般職業紹介状況では、2026年7月の「建築・土木・測量技術者」の有効求人倍率は5.46倍で、職業計の1.05倍を大きく上回っています。
国の計画:2040年度までに「3割少ない人数」で回す
工事は減らないのに人は減る。この状況に対する国土交通省の答えが、2024年4月に策定された「i-Construction 2.0」です。目標は次のように書かれています。
最低でも2040年度までに、2023年度と比較して、建設現場において3割の省人化、すなわち生産性を1.5倍以上向上することを目指す。
出典:i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~(国土交通省)
この計画は、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」の3つを柱にしています。3つ目にはっきり「施工管理」が入っています。
施工管理のオートメーション化として挙げられているのは、主に次のような取り組みです。
- 遠隔臨場:発注者の監督員が現場に出向いて行っていた立会いや段階確認を、カメラとWeb通信で行う。2022年度から原則として全ての直轄土木工事に適用していて、2024年度からは中間技術検査と完成検査にも広げるとしている。
- 画像による配筋の確認:デジタルカメラで撮った画像を解析し、鉄筋の間隔や本数、径などを計測する。2023年度から始めた。
- 書類の削減:工程や写真などの現場データを関係者で共有する仕組みを広げ、紙の書類を作らずに済むようにする。
2022年度の時点で、ICT施工ができる直轄土木工事の87%でICT施工が行われていました。2015年度と比べて、平均約21%の作業時間の短縮が確認されたとしています。
AIに任せるのは手作業。人はマネジメントに寄せる
「AIで施工管理がなくなるか」を考えるときに、一番参考になるのは、国の計画がAIに何を任せようとしているかです。i-Construction 2.0の本文には、次の一文があります。
これまで人が手作業で実施している内容をAIやシステムを活用して自動化し、人はマネジメント業務に特化していくよう変革していく必要がある。
出典:i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~(国土交通省)
国の計画が描いているのは、人が要らなくなる現場ではなく、人の仕事が手作業からマネジメントへ移る現場です。工程、品質、安全を管理する施工管理は、マネジメントの側の仕事です。
ただし、施工管理の中にも手作業はあります。写真の整理、書類の作成、現場に出向いての確認などです。上に挙げた遠隔臨場や画像による計測、書類の削減は、まさにこの部分を減らす取り組みです。施工管理という仕事がなくなるのではなく、施工管理の人が1日のうちに手を動かしている部分が減っていく、と読むのが素直です。
法律はもう変わった:1人の技術者が2つの現場を受け持てる
ICTの活用は、計画の話だけではなく、法律の条件にも入りました。建設業法は、公共性のある施設などの重要な工事では、主任技術者や監理技術者を現場ごとに専任で置くよう求めています。専任が必要になるのは、請負代金が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の工事です(建設業法施行令第27条)。
2024年12月13日からは、この専任の例外が広がりました。建設業法第26条第3項のただし書は、専任でなくてよい場合の一つとして、次の3つの要件を全て満たす工事を挙げています。
イ 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。
出典:建設業法 第26条 第3項 第1号(e-Gov法令検索)
ロ 当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
ハ 主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。
政令と省令で決められている中身をまとめると、次のようになります。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 請負代金 | 1億円未満(建築一式工事は2億円未満) |
| 現場の数 | 2つまで |
| 現場間の距離 | 1日の勤務時間内に回れて、事故などのときの移動時間がおおむね2時間以内 |
| 下請 | 三次下請まで |
| 現場の連絡員 | 技術者と連絡を取る人を現場に置く(土木一式・建築一式工事では実務経験1年以上) |
| ICT | 現場の外から映像と音声で現場の状況を確かめられる機器を置き、施工体制を情報通信技術で確認できるようにする |
| 計画書 | 技術者の残業の見込みと実績などを書いた人員配置の計画書を作り、現場に置く |
これまで1つの現場に1人付けていた技術者が、条件付きで2つの現場を見られるようになりました。人が減る中でも工事を回せるようにするための改正ですが、施工管理の人から見ると、1人が受け持つ範囲が広がる方向の変化でもあります。
兼任できるのは、主任技術者や監理技術者になれる人です。建設業法には、監理技術者を補佐する人を専任で置けば、監理技術者が2つの現場を兼ねられる仕組みもあります。補佐になれるのは1級の技士補などで、資格の段階ごとに就ける立場は施工管理技士の年収は? 1級と2級の違いを法律と統計で見るで整理しています。
ここから言えること
- 工事は減っていない。建設投資は増えていて、古いインフラの工事もこれから増える。
- 人は減っている。建設業の就業者は3割減り、施工管理に近い職業の求人倍率は5倍を超えている。
- 国は「少ない人数で回す」方向に動いている。AIやシステムに任せるのは手作業で、人はマネジメントに寄せる。法律も、ICTを条件に1人で2現場を見られる形に変わった。
施工管理という仕事がなくなる方向の材料は、国の資料からは見つかりませんでした。変わっていくのは仕事の中身で、書類や移動にかける時間が減る代わりに、1人が管理する範囲は広がっていきます。遠隔臨場や3次元データを扱えることと、兼任できる立場に就ける資格を持っていることは、その変化の中で強みになると考えられます。
施工管理の仕事の中身そのものは施工管理とは? 仕事内容・4大管理・1日の流れを法律から整理で、2024年からの残業の上限規制で働き方がどう変わったかは施工管理の残業時間は減った? 上限規制の前と後を統計で見るで見ています。
数字を読むときに気をつけること
- i-Construction 2.0は、国土交通省の直轄工事を中心にした計画です。遠隔臨場などの適用も直轄の土木工事が中心で、民間の建築工事にどこまで広がるかは、この計画からは分かりません。
- 建設投資は名目の金額で、2024年度・2025年度は見込み、2026年度は見通しです。
- 就業者数と有効求人倍率の職業区分には、施工管理以外の人も含まれます。有効求人倍率は、パートを含む常用の数字です。
- 建設から50年以上たつ施設の割合は、国土交通省が便宜的に建設年度で整理したもので、老朽化の程度そのものではありません。
参考にした資料
- 令和8年度(2026年度)建設投資見通し|国土交通省
- 「i-Construction 2.0」を策定しました|国土交通省
- i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~|国土交通省
- i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化に向けて~(資料)|国土交通省
- 労働力調査 長期時系列データ(基本集計)表5 主な産業別就業者数|政府統計の総合窓口(e-Stat)
- 一般職業紹介状況(令和8年7月分)について|厚生労働省
- 監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例|国土交通省
- 建設業法(第26条)、建設業法施行令(第27条・第28条・第30条)、建設業法施行規則(第17条の2・第17条の3)|e-Gov法令検索
